研究課題/領域番号 |
20K17344
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
加納 美優 金沢大学, 医学系, 助教 (60756237)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 乾癬 / スフィンゴシン1リン酸 / S1P1受容体 |
研究実績の概要 |
乾癬は、表皮の細胞増殖亢進と分化不全を特徴とする疾患で、免疫異常がその病態形成に強く関わっている。生物学的製剤の開発により高い効果が期待できる治療が可能となったが、注射製剤であり時に重篤な副作用を合併することがある。そのため、経口投与可能で安全かつ強い臨床効果を発揮する新薬の開発が望まれる。スフィンゴシン1リン酸(S1P)とは、細胞の増殖、分化、免疫、炎症など様々な生理機能に関与している脂質メディエーターの一つである。S1P/S1P受容体シグナルは免疫担当細胞の分化・遊走を制御しており、S1P受容体阻害剤は自己免疫疾患に対する優れた治療薬として有望視されている。特に選択的S1P1受容体阻害剤は、徐脈などの副作用に繋がるS1P3受容体シグナルは阻害しないため、より副作用の少ない薬剤と考えられる。乾癬モデルマウスにS1P受容体阻害剤及び選択的S1P1受容体阻害剤を投与し、その有効性を検討することを本研究の目的とする。 これまでにマウスの耳介や剃毛した背部皮膚にイミキモドを連日塗布し、紅斑・鱗屑・浸潤を伴う乾癬様皮疹を生じることを確認した。次にイミキモド誘発マウス乾癬モデルに選択的S1P1受容体阻害剤を連日経口投与した。耳介皮膚は厚さを測定し、背部皮膚におけては紅斑、浸潤、鱗屑の重症度をスコア化して評価した。また、組織学的に耳介および背部皮膚の表皮の厚さを測定し比較した。コントロール群と比較して選択的S1P1受容体阻害剤投与群において、肉眼的な皮膚症状が改善されるか、マウスの数を増やして検討する予定である。また組織学的に乾癬の炎症が抑制され、表皮肥厚が改善するかも検討していく。今後は、S1P受容体阻害剤であるFTY720と選択的S1P1受容体阻害剤をそれぞれイミキモド誘発マウス乾癬モデルに投与し、炎症抑制効果に差があるかを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
産前産後の休暇および育児休業を取得し、研究を中断した。そのため、当初の予定した計画よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、乾癬モデルマウスにS1P受容体阻害剤であるFTY720と選択的S1P1受容体阻害剤をそれぞれ投与し、コントロール群と比較する。免疫染色、フローサイトメトリーを用いて、皮膚、脾臓、リンパ節におけるCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、B細胞、マクロファージ、好中球などの炎症細胞数を比較する。FTY720投与群と選択的S1P1受容体阻害剤投与群との間に炎症改善効果に差があるか及び徐脈などの副作用に差があるか検討する。また、皮膚や脾臓における制御性T細胞、制御性B細胞についてもフローサイトメトリーを用いて検討する。さらに、皮膚における各種サイトカイン、ケモカインの発現量をreal-time PCRを用いて、解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
産前産後の休暇および育児休業で研究を中断していたため、実験計画に遅れが生じた。予定していた実験を翌年度に施行することとしたため次年度使用額が生じた。 次年度に実験を多数行う予定であり、マウスに投与する薬剤、フローサイトメトリーやPCRの試薬などに使用する予定である。
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