研究課題/領域番号 |
20K17346
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
加藤 卓浩 福井大学, 学術研究院医学系部門, 特別研究員 (80867820)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 皮膚線維化 / EMT / 強皮症モデル |
研究実績の概要 |
全身性強皮症は、皮膚や内臓臓器の線維化と血管障害をきたす膠原病で、病態解明と治療法の確立が急務である。そこで、我々は上皮間葉移行が病態に重要で治療標的になると考え、これを抑制する化合物として、エパルレスタットに着目して研究を行っている。 現在、市販薬エパルレスタットが、上皮間葉移行の抑制を介して強皮症の治療薬として有用か検討した。1)Primary fibroblast培養細胞系で、コントロール群と比べて化合物添加群が、qRT-PCRでCol1a2、FN1の発言を有意に抑制していた。さらに、ウエスタンで、化合物添加群が、Col1a2、FN1、aSMAの蛋白発言を有意に抑制していることが確認できた。さらに、化合物が、Smad2/3のリン酸化を抑制していることが、ウエスタンと免疫染色で確認できたので、その抑制メカニズムの一端を解明できた。さらに、2)疾患モデルマウス(BLM誘導)系で、化合物が、皮膚肥厚を有意に抑制しているのが確認できた。さらに、トリクローム染色と皮膚含有コラーゲン量測定で、コラーゲン産生を有意に抑制していた。こらまでの細胞系・動物系実験の結果から、エパレスタットが強皮症の治療薬として、大きなる可能性を秘めていることが分かった。現在、マウス皮膚に浸潤している免疫系細胞の種類とその数に影響を与えているのかを検討している。さらに、皮膚肥厚抑制のメカニズムについて詳細な検討を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
世界的なコロナ感染の影響で、試薬や細胞用dishなどの納期が遅れたり、納品中止になったりしている。現在、代用品を探したりしながら研究を続けている。
|
今後の研究の推進方策 |
〇培養ヒト皮膚線維芽細胞をTGF-βで刺激し、1)増殖・分化・活性化・遊走、2)線維芽細胞からの細胞外基質の産生能、3)線維芽細胞でのTGF-βやCTGFの発現とSmads2/3やそれ以外のシグナル伝達分子のリン酸化に対するエパルレスタットの抑制作用を検討する。 ○マウスの背部にブレオマイシンを連日皮下注射して真皮から皮下の線維化を誘導する。本モデルにエパルレスタットを経口投与し、効果、副作用、作用機序を詳細に解析する。エパルレスタットの投与により皮膚硬化が抑制される機序として、TGF-βによる局所の線維芽細胞からの細胞外基質の産生や上皮間葉移行の抑制が推定される。また、本薬剤がマクロファージなどのTGF-β/Smads2/3経路も抑制して炎症や線維化を制御するかどうかを検討する。 ○HC不一致マウスの骨髄移植により慢性GVHD様の皮膚線維化を誘導するマウスモデルを使用して研究を進める。前述のブレオマイシンのモデルと同様に、エパルレスタットの経口投与の有用性と作用機序を解析する。 ○TGF-βによる培養ヒト血管内皮細胞の内皮間葉移行の誘導時にエパルレスタットを添加し、血管内皮と間葉系マーカー、内皮間葉移行に関与する転写因子の発現を解析する。 ○上記の2つのマウスモデルで、エパルレスタット投与による内皮間葉移行や局所のマクロファージ活性化と皮膚の血管障害が抑制されるか検討する。これらの結果全体から、エパルレスタットがTGF-β/Smads経路のシグナル制御などにより、局所の線維芽細胞からのコラーゲン産生、内皮間葉移行などを抑制することで、強皮症のモデルマウスの皮膚の線維化や血管障害を抑制することを推測している。
|