研究実績の概要 |
全身性強皮症は、皮膚や内臓臓器の線維化と血管障害をきたす膠原病で、病態解明と治療法の確立が急務である。我々は、上皮間葉移行を強く抑制する化合物を多数の既存薬の中から独自の方法で網羅的にスクリーニングした結果、候補薬の一つとしてアルドース還元酵素阻害薬のEpalrestat(EPS)に着目して研究を行った。本薬剤の線維芽細胞に対する抗線維化活性を培養細胞系で検証するとともに、強皮症マウスモデル(ブレオマイシン誘導性)に投与し、皮膚や内臓の線維化の治療効果や作用機序を明らかにすることを目的とした。研究結果:①EPSは、皮膚線維芽細胞の形質転換を抑制した。EPSを細胞上清中に添加することでqRT-PCRとWesternでCollagen1, FN1, αSMAの発現を抑制していた。②EPSは、EMTを抑制した。EPSを細胞上清中に添加することでqRT-PCRとWesternでFN1, αSMA, N-cadの発現を抑制し、逆にE-Cadの発現は上昇していた。③EPSは、BLM誘導性強皮症マウスの皮膚線維化を抑制した。マウス皮膚HE染色で、真皮の肥厚の比較検討をおこなった。EPSを経口投与したマウスで真皮の肥厚が抑制されていた。また、Trichrome染色では、青色の染色性が減弱しており、線維化抑制も確認された。 本研究で、EPSの線維芽細胞に対する抗線維化活性が培養細胞系で実証され、さらにBLM誘導強皮症マウスでも線維化抑制が確認された。将来的に全身性強皮症や他の線維化疾患や血管障害の治療へ発展を目指す予定である。
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