研究実績の概要 |
先天性魚鱗癬は、出生時あるいは、新生児期から全身又は広範囲の皮膚が厚い角質に覆われる疾患である。重症型魚鱗癬の多くの症例が含まれる常染色体劣性先天性魚鱗癬(autosomal recessive congenital ichthyosis: ARCI)は道化師様魚鱗癬(harlequin ichthyosis: HI)、葉状魚鱗癬(lamellar ichthyosis:LI)と先天性魚鱗癬様紅皮症(congenital ichthyosiform erythroderma: CIE)の3病型からなる。HIは、その中でも最も重篤な先天性魚鱗癬であり、皮膚の発達は胎生期に既に高度に障害されており、出生時より集中治療を必要とし、死亡例も稀ではない。これまでにARCIの病因遺伝子としてはABCA12, ALOX12B, ALOXE3, CERS3, CYP4F22, PNPLA1, SDR9C7, SLC27A4等の表皮脂質に関連する遺伝子が報告され、表皮脂質の異常が魚鱗癬の臨床像を来すそのメカニズムについては不明な点が多く、根治療法も確立されていない。本研究は、ARCIの包括的病態解明と新規治療法開発に直結する基礎的データを得ることを目的とする。前年度に引き続き、当教室の保有する複数の系統の、原因遺伝子の異なるARCIモデルマウスにおける表皮脂質異常が表皮の分化・増殖に影響をもたらすメカニズムの解明のため、表皮、角層部の微細構造の形態学的変化、蛍光抗体染色や免疫組織化学染色による表皮分化・増殖関連蛋白発現の変化を比較し表皮分化異常の評価を継続して行った。
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