研究課題/領域番号 |
20K17361
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
西貝 燕 順天堂大学, 医学部, 博士研究員 (80614007)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 末梢血単核球 / 真皮線維芽細胞 / 創傷治癒 |
研究実績の概要 |
研究代表者に所属研究室は独自に開発した無血清生体外培養法(QQc)に単核球を供し作成した細胞(MNC-QQc細胞)の移植による創傷治癒の促進効果について背部皮膚潰瘍モデル動物(マウス、ブタ)を用いて証明した。しかしながら、MNC-QQc細胞が皮膚線維芽細胞に与える影響やその詳細なメカニズムは明らかになっていない。皮膚再生においてのMNC-QQc細胞の性質・機能の解明により、難治性皮膚潰瘍の発症機構や正常な皮膚再生機構解明の更なる発展が期待できる。 令和2年度では、真皮線維芽細胞の遊走におよぼすMNC-QQc細胞移植効果の評価を免疫不全モデルBALB/cAJcl-nu/nuマウスを用いて行った。まず、streptozotocin(STZ)の5日間腹腔内注射により1型糖尿病を誘導した後、マウス背部皮膚にステント潰瘍を作製した。次に、ヒト末梢血由来MNC-QQc細胞を潰瘍の筋膜下に移植し、移植後14日目の皮膚潰瘍部位を回収する。線維芽細胞は免疫染色法を用いて可視化し、潰瘍皮膚での線維芽細胞の局在及び局在量を検討した。MNC-QQc細胞移植した糖尿病マウス潰瘍皮膚では、線維芽細胞マーカーであるPDGFRaの発現はMNC細胞移植群より増加した。本研究では、MNC-QQc細胞の移植による潰瘍エリアでの真皮線維芽細胞を増加したことが示唆された。本年度では、MNC-QQc細胞が皮膚線維芽細胞への作用をin vivoで証明し、健常及び糖尿病環境下における創傷治癒メカニズムの違いを明らかにした。in vivo実験でMNC-QQc細胞の移植による糖尿病皮膚の真皮再生促進を確認した後、in vitro細胞共培養の予備実験を行った。ヒト由来線維芽細胞をグルコース負荷して培養する疑似高血糖環境を作製し、MNC-QQc細胞とヒト由来線維芽細胞共培養の最適細胞濃度を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和2年度では、真皮線維芽細胞の遊走におよぼすMNC-QQc細胞移植効果の評価を免疫不全モデルBALB/cAJcl-nu/nuマウスを用いて行った。令和2年度に実施予定の実験について、1、streptozotocin(STZ)の5日間腹腔内注射により1型糖尿病の誘導モデルを成功した。2、マウス背部皮膚にステント潰瘍の作製、観察を成功した。3、ヒト末梢血由来MNC-QQc細胞を潰瘍の筋膜下に移植し、創傷治癒促進効果の観察を出来た。4、潰瘍皮膚を回収し、免疫染色法により、潰瘍皮膚での線維芽細胞を可視化できるマーカーを確定した。5、MNC-QQc細胞の移植による真皮線維芽細胞に及ぼす影響をin vivoで証明した。 さらに、今後の研究を円滑に進めるために、in vitro予備実験を行った。ヒト由来線維芽細胞をグルコース負荷して培養する疑似高血糖環境を作製し、MNC-QQc細胞とヒト由来線維芽細胞共培養の最適細胞濃度を検討した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度において、in vivo実験でMNC-QQc細胞の移植による糖尿病皮膚の真皮再生促進を確認した後、令和3年度からin vitro細胞共培養実験で、繊維芽細胞遊促進因子の探索とグルコース負荷効果を解析する。 MMC-QQc細胞の共培養による線維芽細胞の遊走能評価。 ヒト由来線維芽細胞を培養し、ピペットチップで創(疑似創傷)を作成する(スクラッチアッセイ)。チャンバー内のMNC-QQc細胞と線維芽細胞を共培養し、線維芽細胞の遊走による創閉鎖をコントロール群(共培養無し)と比較する。閉鎖は遊走距離/時間(μm/h)及び開創の面積を画像解析ソフトにて算出し解析する。次に共培養の培養上清液を回収しマルチプレックスアッセイキットを用いて、細胞遊走に関連するサイトカイン・ケモカイン等の液性因子の発現をMNC-QQc細胞との共培養の有無で比較、網羅的分析し、真皮線維芽細胞遊走促進因子の候補分子を探索する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、令和2年度では国際学会に参加しない為、外国への旅費交通費を生じない。使用計画として、予定実験以外に経費の支出について、論文掲載料に使用予定である。
|