研究課題/領域番号 |
20K17362
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
宮竹 佑治 東海大学, 医学部, 助教 (30868881)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 蚊刺過敏症 / EBV / BART |
研究実績の概要 |
昨年度までの成果として、EBV由来小分子RNAであるBARTの配列をCre-loxPシステムにより組織や細胞特異的に発現できるマウスの作出を実施した。本研究申請時点で飼育していたEBウイルス由来のマイクロRNAを全身に発現する組換えマウスは皮膚掻痒を呈して血中のIgEが上昇するという結果が得られていたため、昨年度に作出したマウスでも同様の現象がみられることを確認するべくCAG-Creマウスと交配して、全身の細胞にBARTを発現させた陽性コントロールマウスを作出しようとした。その結果、BART配列とCAG-Cre配列を同時に持つマウスは産出されなかったため、BARTを高発現するマウスは胎生致死となることが示唆された。この胎生致死と成体のアレルギー様反応との関係性は不明であり興味深い結果ではあるが、成体におけるBART発現の機能解析を行うことが目的であり、また胎生致死により全身発現性のコントロールマウスが得られなかったため、まずVav1-creマウスと交配することにより作出される血液系細胞にBARTが発現するマウスについて検討を行うことにした。血液系細胞にBARTが発現するマウスは胎生致死にはならず産出されたが、幼年期である現在においては皮膚掻痒などの表現型は示していない。成体になるとアレルギー様症状を呈する可能性や、施設の都合により初期の結果が得られた全身発現マウスとは別室での飼育となっているため、なんらかの環境要因の後押しによりアレルギー様症状が誘引される可能性を考慮しても、このマウスに対して蚊唾液腺抽出物を皮下投与することにより、野生型マウスと比べて劇的な症状を呈するか調べることにより、血球細胞でのBART発現が重要であるかどうか解明することができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
BART発現マウスおよび各種Creマウスを当初飼育していた飼育室において特定病原体が発見されたため、すべてのマウスを凍結精子から作出し直すことになり研究全体に大幅な遅れが生じた。また、予期せずBART全身発現であるCAG-Creマウスとの子が胎生致死であったため、細胞や血液成分の解析に至らなかった。EBV陰性とされる細胞株を用いた解析についても他のNK細胞株より培養および遺伝子導入が難しく信頼に足る結果を得るに至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
血液系細胞にBARTが発現しているマウスに対して蚊唾液腺抽出物を投与することでアレルギー様症状を誘引して解析することにより、まず血液系細胞がアレルギー様症状の主原因であることを突き止める。その後、各種血液細胞の解析や骨髄移植などを用いて大まかに原因細胞に当たりをつけて、その細胞特異的なBART発現マウスを作出して解析することでアレルギー様症状の原因となるBART発現細胞を同定する。 血液系細胞でのBART発現がアレルギー様症状に関係していなかった場合が大きな課題であり、そのときには血液以外では咽頭上皮細胞などにEBVが感染するとされるため、上皮系細胞などで特異的に発現できるマウスの導入により対応することになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により研究用品の生産や輸入が滞っていたため、実験や解析に用いる試薬や物品が調達できなかったため次年度使用額が生じた。 翌年度分として請求した助成金は当初の実験計画通りに使用する。次年度使用額に関しては、本年度に消耗した当研究室の予備物品を補充する目的で使用する。
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