研究課題
慢性GVHDの病態において、炎症引き続いて生じるマクロファージの活性化、筋線維芽細胞の活性化により線維化が引き起こされることが重要であることは以前の研究で解明していた。特に急性GVHDによる炎症病態が慢性GVHDの誘因となることが多い。我々は過去に腸管や皮膚急性GVHDにおける組織幹細胞の障害について報告してきたが、今回、急性GVHDモデルマウスを用いて肝臓に浸潤するマクロファージから産生されるTGFbが胆管上皮の組織幹細胞を傷害していることが判明した。そしてさらにTGF-bレセプターシグナルを阻害するSMAD2/3阻害剤 (SB-431542)を移植後14日目から28日目に投与することによって、胆管上皮の組織幹細胞障害を防ぐことを示した。それにより、SMAD2/3阻害剤の投与が肝臓GVHDにおいて胆管上皮の機能を保持し、急性肝GVHDにおける指標である黄疸を軽減することを解明することができた。急性GVHDの機序を研究することは引き続き生じる慢性GVHDの発症予測や治療にも繋がる可能性があり重要である。また、GVHDモデルマウスの実験により、移植後の一過性疲弊T細胞の分化を促進することによって、移植片対白血病効果を促進することが可能になることを解明した。研究の成果により、一過性疲弊T細胞が慢性GVHDの責任細胞の一つであることが判明し、これまでに知られていなかった新たな慢性GVHDの発症機序を解明できた。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Blood
巻: 142 ページ: 477~492
10.1182/blood.2023019875