本研究は、多発性骨髄腫におけるレナリドミド・デキサメタゾン療法の治療効果におけるNK細胞の寄与について検討することを目的とした。 まず、レナリドミド・デキサメタゾン療法前後の末梢血単核球を用いた免疫細胞のフローサイトメトリー解析の結果、治療後に治療前と比較してNK細胞の活性化がみられた群においてレナリドミド・デキサメタゾン療法の効果が良好であった。in vitroにおける末梢血単核球へのレナリドミド暴露でもNK細胞の活性化が確認され、骨髄腫細胞との共培養実験においてNK細胞の細胞障害活性の増強を確認した。しかし、レナリドミドによるNK細胞活性化の個体差の要因は不明であった。そこで、レナリドミドによるNK細胞活性化の個体差の要因として患者ごとのKIR遺伝子のハプロタイプの違いを想定した。患者のgermlineのDNAを用いてKIRのタイピングを行ったところ、KIR2DS2またはKIR2DS3の活性型KIR遺伝子を持つ群でレナリドミド・デキサメタゾン療法後のNK細胞の活性化がみられ、2年のPFSが優位に良好であった。 引き続き、骨髄腫細胞のHLAのLOHや患者ごとのHLA-KIRの組み合わせとレナリドミド・デキサメタゾン療法の奏功との関連性などについて研究を実施していく。また、CD38抗体を含めたその他の治療レジメンにおける治療効果にNK細胞がどの程度関与しているのかも検討していく予定である。
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