研究課題/領域番号 |
20K17371
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
梅澤 佳央 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (50813218)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | PECAMー1 / SDF-1 / CXCR4 |
研究実績の概要 |
マウスの骨髄系細胞株である32Dにレトロウイルスベクターを用いて野生型PECAM-1とPECAM-1のリン酸化阻害変異体を発現させた細胞を作成した。過去の我々の検討からPECAM-1がPI3K/Akt/mTORC系を活性化させることが示唆され、PI3K阻害薬、mTORC阻害薬などを用いて、生存に与える影響を検討したが、PECAM-1発現の有無で細胞の生存や増殖に有意差は得られなかった。この他Jak阻害薬、Bcl2阻害薬、BTK阻害薬、MEK阻害薬でも同様の検討を行なったが、同様に有意差は得られなかった。過去の検討からPECAM-1は接着分子でありながら、SDF-1/CXCR4シグナルの増強効果を示すと考えられたため、骨髄間質細胞株であるKUSA-H1、ST2と32D/PECAM-1細胞の共培養を行い、IL-3除去による細胞死誘導に及ぼす影響を検討した。しかし、KUSA-H1やST2細胞そのものの細胞死をある程度誘導している影響もあるのか、PECAM-1の発現の有無による細胞死誘導への影響は見られなかった。SDF-1の発現レベルが低下している可能性を考慮し、KUSA-H1やST2存在下にSDF-1を加えて共培養する検討も行なうことに加え、マウスの線維芽細胞由来細胞株出あるNIH3T3にレトロウイルスベクターを用いてSDF-1を発現させる細胞を作成することを試みている。また、PECAM-1のサイレンシングされた32D細胞やヒト由来細胞株を用いたPECAM-1の発現細胞を用いて同様の検討を行い、骨髄間質細胞とのクロストークを検証する予定である。加えて、臨床保存検体を用いてウエスタンブロッティング法にてPECAM-1の発現の検討を開始しており、臨床経過と照らし合わせながら予後との相関性を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナウイルス、複数回にわたる緊急事態宣言の影響により一時は実験,研究室運用そのものがほぼ中止となり、必要最低限の細胞培養などに限定された影響で、実験計画は遅延せざるを得なかった。また、コロナウイルスの診療に従事する時間も多く、当初の予定より実験に従事する時間は少なくなったと思われる。少ない時間ながら適宜データの採取や検体の保存などは継続しており、次年度からの実験遂行に大きな支障が出ないように計画を変更していく。
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今後の研究の推進方策 |
PECAM-1のサイレンス(knock down)細胞の作成に加え、NIH3T3細胞のSDF-1発現細胞株を作成し、骨髄間質細胞株との共培養や各種阻害薬での検討を行い、特に細胞死誘導に注目してフローサイトメトリーにて検討を行う。得られた結果から、細胞周期調節蛋白、アポトーシス関連蛋白活性化についてウエスタンブロット法、免疫沈降法、フローサイトメトリー法、免疫蛍光染色等の分子生物学的手法により解析する。加えて、PECAM-1のリン酸化阻害変異体、PECAM-1との強い結合が報告されているSHP2とその変異体、CXCR4の機能阻害変異体を用いて骨髄間質細胞との相互作用によってPECAM-1がCXCR4シグナルを修飾する分子機構を解明する。PECAM-1とCXCR4との相互作用が上記の系で証明困難な場合、SDF-1のもう一つの受容体であるCXCR7(ACKR3)が影響を与えている可能性を考え、CXCR7のサイレンス実験などの検討を加える。並行して当施設および関連病院で経験した難治性白血病、リンパ性白血病および骨髄増殖性疾患の臨床検体を用いてフローサイトメトリー、病理学的検討などでPECAM-1、CXCR4の発現解析を行う。症例数は20例程度を予定し、治療経過、予後との関連に関して臨床統計学的な評価を行う。
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