これまでの検討からPECAM-1が白血病などの造血器腫瘍において骨髄微小環境との相互作用を通じて再発難治化に寄与している影響を考えた。PECAM-1発現は32D細胞においては細胞遊走に有利に働くものの、inhibitorなどを用いた検討において、PECAM-1が細胞増殖や抗アポトーシスに与える影響に有意なものは認めなかった。また、Myeloid系の細胞株にPECAM-1を発現させて検討した系においては骨髄間質細胞との共培養系において明らかなPECAM-1発現による生存へのadvantageが見られなかった。Lymphoid系におけるPECAM-1発現の影響を解析するため、慢性リンパ性白血病(CLL)をモデルとして検討を行った。モデル細胞株として当実験室で過去に樹立されたCLL細胞株であるTMD2を用いて検討を試みたが、TMD2へのPECAM-1遺伝子導入はtransfectionの効率が悪く細胞増殖が不良であった。そこでCLL臨床検体の10例をフローサイトメトリーでPECAM-1の発現を見たところ全例で陽性であったため、それらの臨床検体をヒト骨髄間質細胞の細胞株であるHS-5およびHS-5にPECAM-1を強発現した細胞と共培養した結果、細胞生存期間の延長が見られ、これらの延長効果はIbrutinibにより阻害された。我々の過去の検討からPECAM-1がSDF-1などの様々なサイトカインの存在下にPI3K/Akt/mTORC経路などを活性化させることが示唆されており、これらのシグナル活性化を通じて慢性リンパ性白血病細胞においてPECAM-1が骨髄微小環境を通じて細胞生存に有利なファクターとして働いている可能性が考えられる。
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