研究課題/領域番号 |
20K17379
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中井 りつこ 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (90836420)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 新規遺伝子 / 造血 / 分化障害 / 核内遺伝子 / 変異胚性幹細胞株 |
研究実績の概要 |
哺乳動物のゲノムに関する知見は遺伝子工学の技術発展により飛躍的に進歩したが、生体の発生においてその機能が明らかにされている遺伝子は限られている。 造血の発生では、時系列に沿って多様な血液細胞が正確に生み出されていく。当然のことながら、この過程は多くの遺伝子によって精密に制御されており、事実造血幹細胞の発生に関わる遺伝子が数多く報告されている。しかし一方で、造血幹細胞に赤血球・白血球・巨核球など多系統の細胞に分化する能力を付与する分子メカニズムは明らかではない。この過程に関わる遺伝子の異常は、生後の造血器腫瘍の病因に関与している可能性があり、一つでも多く明らかにすることは、生物学的な意義のみならず、ヒトの臨床医学においても重要である。応募者らの研究グループは、血球への分化障害をきたす変異胚性幹細胞株のスクリーニングを行い、血球分化が著しく障害される変異株から、造血幹細胞の分化能力を制御する新規遺伝子を同定した。本年度の研究では、この遺伝子の条件付き欠損マウスを作製し解析を行った。血液細胞特異的欠損マウスは、胎生後期に致死的な貧血をきたした。そこで、この胎児の赤血球造血の発生に関して、精緻な解析を行なった。胎生14.5日における胎仔肝造血細胞を、CD71(Transferin receptor protein 1)とTer119(Glycophorin-A結合抗原)の染色パターンによって、未分化な段階から成熟した段階まで層別化したところ、野生型の群に比し血液細胞特異的欠損マウス群では、赤芽球の早期段階において分化障害がみられることを見出した。また、Rosa26CreERT2マウスを用いて、成獣において誘導的に欠損マウスを作製したところ、成獣骨髄においても同様の赤芽球分化障害が得られることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規遺伝子の赤血球造血発生における機能解析の結果が順調に出ており、現在、論文化の作業も並行して進めている。 関連タンパク質の同定にはまだ至っていないが、今後更なる解析を進め、検討予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1. 目的とする新規遺伝子の血液細胞特異的欠損マウスの胎仔肝造血細胞を用いて、野生型の群と血液細胞特異的欠損マウスの群それぞれから造血幹細胞分画と赤芽球の早期分化段階の細胞分画をsortingし、RNA-Seqを用いて、遺伝子発現プロファイルに関する解析を進める。 2. 適当な細胞株を用いてエリスロポエチン下で赤血球分化させ、特異抗体によって目的とする新規遺伝子の結合タンパク質の単離・同定を試みる。また、CRISPR/Cas9 を用いて、細胞株内で新規遺伝子をknockoutし、マウス胎生14.5 日肝における造血細胞と同様の障害が生じるのかも検討する。
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