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2022 年度 実施状況報告書

多発性骨髄腫におけるCD38経路を介した腫瘍細胞生存機構の解明と新規治療への応用

研究課題

研究課題/領域番号 20K17382
研究機関熊本大学

研究代表者

河野 和  熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (70776244)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード多発性骨髄腫 / CD38
研究実績の概要

多発性骨髄腫細胞に高発現するCD38分子の持つNAD+分解酵素活性の骨髄腫細胞の生存・増殖における意義を明らかにし、CD38の酵素活性を標的とした多発性骨髄腫の新規治療法の開発を目的として研究を開始した。
骨髄腫細胞におけるCD38の細胞生物学的役割を明らかにするためにCD38陽性分画と陰性分画の双方を有する骨髄腫細胞株を用いて各種解析を行った。CD38陽性分画と陰性分画との間で細胞内NAD+/NADHを解析したところ、CD38陰性分画で有意に高いNAD+/NADHを認め、骨髄腫細胞上のCD38が細胞内NAD+濃度に寄与することが明らかになった。また、CD38陽性・陰性分画で特異的に発現する蛋白分子をプロテオーム解析とメタボローム解析を用いて検討したところ、CD38陰性骨髄腫細胞はCD38陽性骨髄腫細胞と比較して解糖系代謝経路が亢進していることを証明した。さらに、CD38陰性細胞はCD38陽性細胞と比較して細胞周期が著明に抑制されていた。また、CD38陰性骨髄腫細胞の方がレナリドミドやボルテゾミブといった抗骨髄腫治療薬に対する感受性がCD38陽性骨髄腫細胞と比較して低下していた。以上より、CD38陽性骨髄腫細胞とCD38陰性骨髄腫細胞との間の細胞生物学的差異が明らかとなった。
CD38のNAD+酵素活性阻害剤である78cは骨髄腫細胞に代謝変化、細胞増殖抑制、細胞死を誘導した。さらに我々はin vitroにおいて78cに抵抗性の骨髄腫細胞株の樹立に成功し、今後同細胞株を用いてCD38酵素活性に非依存性の骨髄腫細胞生存機構を検証する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究代表者が熊本大学病院での新型コロナウイルス感染症対策に一部従事していた影響で本研究課題を行うにあたって時間的な制約が存在した。また、in vitroでCD38酵素活性阻害剤(78c)を骨髄腫細胞株に長期間作用させることでCD38酵素活性阻害抵抗性の骨髄腫細胞株を樹立に想定されていた以上に時間を要した。さらに、患者由来の骨髄腫細胞を用いたプロテオーム、メタボローム解析の最適化に時間を要した。

今後の研究の推進方策

樹立に成功したCD38酵素活性阻害剤(78c)に抵抗性の骨髄腫細胞株を用いてCD38酵素活性に非依存性の骨髄腫細胞生存機構をプロテオーム・メタボローム解析、薬剤感受性試験等によって検証する予定である。また、骨髄腫細胞株のみならず多発性骨髄腫患者由来の骨髄腫細胞を用いてCD38陰性骨髄腫細胞の特性を明らかにする。さらに、CD38抗体薬に抵抗性となった患者由来骨髄腫細胞をプロテオーム・メタボローム解析を用いて解析し、臨床検体におけるCD38阻害に対する骨髄腫細胞の抵抗性の機序を明らかにする予定である。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の流行に伴い参加予定だった学会への参加を見合わせたために一部旅費の支出がなかったことや、実験計画の遅れ(78c耐性骨髄腫細胞株の樹立、患者検体を用いたプロテオーム・メタボローム解析)に伴い前年度に開始予定であった実験を後ろ倒しにせざるをえなかったことが次年度使用額が生じた主な理由である。新型コロナウイルス感染症の終息時は開催地での学会参加に伴う旅費、患者検体解析に伴う消耗品の費用、最終的にはin vivo実験への費用に使用することを予定している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] CD38は骨髄腫細胞の代謝と増殖を制御する2022

    • 著者名/発表者名
      河野和、串間咲希、畑裕之、松岡雅雄
    • 学会等名
      第47回日本骨髄腫学会学術集会
  • [学会発表] 骨髄腫細胞の代謝と増殖におけるCD38の役割2022

    • 著者名/発表者名
      河野和、串間咲希、畑裕之、松岡雅雄
    • 学会等名
      第84回日本血液学会学術集会

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公開日: 2023-12-25  

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