研究課題/領域番号 |
20K17388
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
戸田 侑紀 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (40779724)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞内シグナル伝達 / 低酸素 / exosome分泌 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、骨髄腫幹細胞のアキレス腱として『細胞外分泌小胞(exosomes) によって分泌されるRNA(exRNA)』に着目し、低酸素環境に潜む骨髄腫幹細胞の生存戦略を分子メカニズムから解明することである。前年度に引き続き、遺伝子組換え操作による条件付きexRNA分泌不全株の作製を試みたが、低酸素適応に至るまでのクローニング操作の中で安定に培養できる細胞を単離することができなかった。またHK2のミトコンドリア局在を介した低酸素適応に係る分子メカニズムを解明するために、前年度からの懸案事項であるミトコンドリア分画の純化について種々検討したが、十分には改善できなかった。HK2以外の解糖系関連分子の発現を広く解析したところ、乳酸トランスポーターの発現がexosome分泌阻害により低下していた。これより解糖系全体の抑制が細胞死につながった可能性が示唆されたため、細胞内乳酸量を今後定量する。またHK2のその他の機能としてオートファジーが知られているため、HK2発現低下による細胞死誘導機序の一つとして検討する。 一方で、前年度に見出した低酸素適応よるexosome分泌亢進に関連する候補シグナルAについてバリデーションを一部行った。シグナルAを阻害する化合物を用いた実験の結果から、exosome分泌亢進にシグナルAが一部寄与することが示唆された。また、低酸素適応株におけるシグナルA阻害剤の細胞増殖抑制効果が親株に比べて著しく高く、「低酸素適応株の生存におけるexosome分泌の重要性」を支持する知見と考えられた。今後引き続きバリデーションとして、シグナルAの下流に存在する細胞内膜輸送系制御分子の発現とexosome分泌の関係性を検証していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
従来の研究計画に沿ったものについては想定通りに進まず、成果に繋がらないものが多かった。このような状況下にて計画を再考し、低酸素環境での培養による細胞内シグナル伝達について広く検索することとした。これが奏功し、現時点でexosome分泌制御に関わるシグナルAを同定することができた。本項目および既定の計画において検討の余地がある項目について解析を併せて進めている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2022年度においては概要に示した実験を行うと同時に、これまでの成果を論文にまとめ、国際学術誌へ投稿することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額(1円)で執行可能な物品がなかったため、次年度使用額として繰り越す。次年度分として請求した助成金と合わせた上で、物品費に充当する。
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