研究課題
昨年度、AML細胞内でBcl11aがリクルートするコリプレッサーとしてLSD1/HDAC1/2を明らかにし、これらに対する阻害剤を用いた解析によりBcl11aの新規標的遺伝子として、E3ユビキチンリガーゼであるAsb2を同定した。今年度は、Asb2のAMLにおける役割についての解析を中心に研究を進めた。まず昨年度に作成した、Trib1/Bcl11a AML細胞 (TB-13)にAsb2を過剰発現させた細胞株を用いて、マウス移植実験を行い、白血病発症が阻害されることを確認した。次にBcl11aによるAsb2制御が、AML発症に重要な役割を担っていることを示す目的で、Asb2のエンハンサー領域で、Bcl11a/PU.1が結合している領域をCRISPR/Cas9システムを用いて削除した変異体を作成し、これをTB-13細胞へ導入した。この変異体発現TB-13細胞は、Asb2発現が亢進し、Asb2過剰発現TB-13細胞と同様に、in vitroで細胞増殖能・自己複製能が低下し、細胞遊走能や接着能が低下した。さらに、この変異体発現TB-13細胞をマウスに移植すると、骨髄生着が阻害された。反対に、Trib1のみを発現するAML細胞 (Tr1)を用いて、Asb2をノックダウンしたところ、Asb2の基質であるfilamin Aの発現が亢進し、細胞遊走能や接着能が回復した。またBCL11Aを高発現するヒトAML細胞株HL-60においても、BCL11AノックダウンやLSD1/HDAC阻害剤がASB2発現を回復させることを確認し、データベースを用いたAML患者コホートの解析により、BCL11AとASB2の発現が逆相関関係にあることを示した。以上より、Trib1がC/EBPaを分解する一方でBcl11aがPU.1の機能を抑制し、両者の機能によりAMLの悪性化を進展させていることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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