研究課題
2022年度は樹立したHDAC阻害剤耐性T細胞リンパ腫細胞株についての詳細な機能解析を継続しており、耐性細胞株を用いて網羅的な薬剤感受性スクリーニングを行った。結果、プロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブに対する感受性が、耐性細胞株では顕著に亢進していることを見出した。ボルテゾミブはHDACの発現そのものを低下させ、ヒストンアセチル化を誘導することが既報により示されている。そこで、HDAC阻害剤耐性細胞株におけるヒストンアセチル化を評価するため、抗アセチル化ヒストン H3(Ac-H3)抗体を用いたウェスタンブロットを行い検討した。結果、HDAC阻害剤耐性細胞株では、本来HDAC阻害剤暴露で亢進するはずのAc-H3発現が不変であることを見出し、ヒストンアセチル化を阻害する何らかの経路が亢進していることが示唆された。HDACの発現自体は、耐性細胞株と親株で変化がなかったが、ボルテゾミブ暴露により、耐性細胞株ではHDAC発現の低下を認め、AC-H3の発現亢進が誘導されることを見出した。これらの結果からは、HDAC阻害剤耐性細胞ではヒストンアセチル化の阻害が生じており、ボルテゾミブによりヒストンアセチル化を再度誘導することで、細胞死を誘導しうる可能性が示された。ボルテゾミブは多発性骨髄腫の治療においては臨床応用されており、広く用いられる薬剤である。HDAC阻害剤治療後のT細胞リンパ腫の治療において、ボルテゾミブが有用な治療選択肢となりうる可能性が示唆された。
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International Journal of Hematology
巻: 116 ページ: 712-722
10.1007/s12185-022-03418-5