これまで複数の研究で移植後腸内細菌叢と移植後合併症の関連性が示唆されているが、いずれの研究も短期間の少数の時点における菌叢の評価に基づく解析であり、長期間にわたる腸内細菌叢の経時的変化と移植合併症との関連性についての報告は乏しく、また腸内細菌叢を構成する 菌の成分に着目した研究は十分に行われてこなかった。そこで我々は本研究を計画するにあたり、本研究の特色として、経時的に長期間にわたって腸内細菌叢の変化を観察すること、を重要視した。
移植後腸内細菌叢と移植後合併症との関連性についてさらに検証することで、 移植後予後の予測モデルの構築、腸内細菌叢への影響の少ない移植前処置や抗菌薬の使用法 を明らかにすること、さらには腸内細菌叢移植やその他新たな治療戦略を開発すること、究極的には移植後の諸 問題を解決し、移植予後を改善させることを目的としている。
当院では晩期合併症に対する 長期フォローを重視していることから他院では通常2-3年程度で終了する移植後患者のフォローアップを20年以上にわたり行っている。その利点を活かし、今回我々は(1)経時的な菌叢の解析、(2)移植後20年目までの長期の検体を収集を行い、メタゲノム解析を行っている。解析データはクオリティチェックを行い、健常者検体を対照群として、腸内細菌叢と臨床経過の関連についての解析を多角的に行なっている。現在投稿準備を進めており、近日公表予定である。
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