令和4年度は新たに採取した移植後長期生存患者の検体を用いて解析を行った。対象は1年以上生存している患者(移植後1年~21.7年、中央値6.4年) 59名である。本解析により、同種移植後の長期生存者では、年齢や性別をマッチさせた健常対照者と比較して腸内細菌の多様性が低く、酪酸酸性菌の相対存在量が低下していることなどの移植後長期生存者の腸内細菌叢の異常を明らかとした。また、移植後長期生存者では急性期の急性GVHDによる腸内細菌叢の異常が長期間持続していること、また二次発癌を合併した患者の腸内細菌叢の異常を見出した。本研究成果はBritish Journal of Haematology誌へ発表した。これまで、同種移植後長期生存者の腸内細菌叢に関する報告はなく、本研究が明らかにした知見の重要性は高いと考えている。 本科研費交付期間中に本研究に関連して上記を含めて次の3報の論文を発表した。1) Biol Blood Marrow Transplant. 2020 May;26(5):1028-1033、2) Bone Marrow Transplant. 2021 Jul;56(7):1728-1731、3) Br J Haematol. 2022 Dec 5.doi: 10.1111/bjh.18574. Online ahead of print. 1)では同種移植後の腸内細菌叢異常を経時的に明らかにし、1か月目の腸球菌の相対存在量と移植後生存率との関連を明らかにした。2)では都立駒込病院血液内科と共同で既存データの解析を行い、腸内細菌叢異常と慢性GVHDの関連について見出した。 現在、これらの研究成果を受けて、プロバイオティクスを用いた特定臨床研究を計画中である。
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