研究課題
がん原遺伝子であるPIMキナーゼファミリーでは、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)細胞において、正常細胞(末梢血単核細胞)と比較すると、PIM1が高発現していた。PIM阻害薬PIM447は、in vitro でATL細胞に対して細胞傷害活性を濃度依存的に発揮すること、NSGマウスにATL細胞株Su9T01細胞を皮下移植するATLマウスモデルおいても腫瘍増殖抑制効果を認めること、PIM1発現抑制はATL細胞にアポトーシスを誘導することを確認した。ATL細胞に特徴的なスーパーエンハンサー制御遺伝子群である、転写因子IRF4やc-MYB、ATL細胞の生存増殖に重要なNF-kB経路の転写因子RelAは、PIM1発現抑制で蛋白およびmRNAレベルで発現低下することを確認した。さらに、MYBやRELA発現抑制は、ATL細胞にアポトーシスを誘導しながら、PIM1の発現を低下させた。以上の結果から、PIM1はNK-kB経路やc-MYBにより発現制御されながら、NF-kB活性化あるいはATLスーパーエンハンサー制御機構を維持する因子として働いていることが推測された。そこで、PIMキナーゼによるリン酸化修飾の標的蛋白を同定するために、Su9T01細胞にPIM447を処理し、TMT標識/Fe-NTAによるリン酸化ペプチド精製でのプロテオーム解析を行い、AP-1転写因子を構成するJunBの脱リン酸化を同定した。JunBはリン酸化されることで、DNA結合能を高めること、またATL細胞由来の制御性T細胞では、JunBはIRF4と協調的に転写制御を行っていることから、PIM1はJunBのリン酸化を介してATL細胞の遺伝子発現制御機構の一端を担いながら、ATL細胞に特徴的なシグナル伝達経路の活性化や遺伝子発現によりPIM1も発現制御されていることが示唆された。
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Cancers
巻: 13 ページ: 4441~4441
10.3390/cancers13174441