研究実績の概要 |
申請者は, 知的・成長障害を伴ったEBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症(EBV-HLH)の重症例を経験し, エキソーム解析からCoiled-Coil Domain-Containing 22 (CCDC22)遺伝子の新規変異(V38M)を同定した. CCDC22は, 知的障害を伴うX連鎖性3C症候群の責任遺伝子であり, NFκB活性の共役因子の一つであること, 細胞内輸送蛋白として機能することなどが報告されている. CCDC22V38M変異によるEBV-HLHの発症・重症化への関与が予想され, 培養細胞とCcdc22遺伝子改変マウスを用いた解析を行い, いくつかの結果を得ることができた. 1) CCDC22V38M変異蛋白をHEK293Tに過剰発現させると, CCDC22の細胞内局在変化を認め, 蛋白細胞内輸送に何らかの変化を及ぼすことが示唆された. 2) マウス神経芽細胞腫由来のNeuro2a細胞のCCDC22ノックダウン細胞株では, レチノイン酸による神経分化誘導において, 分化障害を来すことが分かり, CCDC22の神経系への関与が示唆された. 3) 成獣マウスの脳や胸腺, 胎仔マウスの脳や肝臓で, CCDC22蛋白の強い発現を認め, CCDC22が神経系, 免疫系における重要な役割を担う可能性が示唆された. 4) Ccdc22遺伝子改変マウスの解析では, 神経系・免疫系の組織学的な検討, B・T・NK細胞, 単球等のFACS解析においては明らかな異常は認めていない. 5) Ccdc22遺伝子改変マウスの胎仔線維芽細胞(MEF)のRNA-seqでは, サイトカイン・ケモカイン関連のmRNA発現量の変化を認めた. 以上の結果から, CCDC22のV38M変異による何らかの機能変化と, CCDC22は神経系・免疫系において重要な役割を担うことが示唆される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CCDC22変異の機能解析を行うために, 培養細胞を用いた解析, 遺伝子改変マウスを用いた解析を行っている.培養細胞においてはCCDC22変異による細胞内局在変化や, CCDC22ノックダウンによる神経分化障害など, CCDC22変異による影響を確認できているが, 遺伝子改変マウスの解析は, MEFにおけるCCDC22変異による影響は確認できているものの, コロナ禍の影響等もあり, 必要量のマウスを用意できず, HLH誘発実験は未実施であり, 進捗状況はやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞とCcdc22遺伝子改変マウスのMEFにおけるCCDC22変異による影響を明らかにすることができたが, EBV-HLHの病態への関与を示せるようなデータはまだ得られていないため, 遺伝子改変マウスを十分確保し, LPS刺激による免疫系への影響の解析や, CpG DNA投与によるHLH誘発実験などにより, 遺伝子改変マウスにおける免疫応答の変化や, HLHの罹患状況の変化など確認する.
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