研究課題/領域番号 |
20K17415
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
古屋 淳史 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (30748257)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ゲノム編集生体スクリーニング |
研究実績の概要 |
我々はPD-L1ゲノム構造異常が成人T細胞白血病/リンパ腫やB細胞リンパ腫をはじめとする一部の悪性リンパ腫で非常に高頻度に認められることを明らかにしてきたが、この異常がPD-L1の発現上昇を介して、細胞障害性T細胞からの免疫回避能を亢進していること以外の機能的役割についてはほとんど分かっていない。そこで本研究は、我々が独自に開発したツールを用いて、PD-L1ゲノム構造異常が悪性リンパ腫の発症および維持に果たしている機能的役割を明らかにすることを目的として、①Pd-l1遺伝子改変マウスを用いた各リンパ球サブセットにおけるPd-l1機能解析、②PD-L1異常に関連する悪性リンパ腫で高頻度に異常を認める遺伝子を標的とするCRISPR in vivoスクリーニング、③マウスリンパ腫検体を用いたPd-l1異常による悪性リンパ腫発症維持機構の解明を行う。 2020年度は①について、我々が作製したPd-l1遺伝子改変マウスをB細胞特異的Cre発現マウスもしくはCD4陽性T細胞特異的Cre発現マウスと交配し、骨髄や脾臓、末梢血における各種造血細胞の解析を行うことによって、細胞分画特異的なPd-l1の機能を明らかにした。②については、PD-L1異常に関連する悪性リンパ腫で高頻度に異常を認める遺伝子を標的とするCRISPR in vivoスクリーニング移植実験を追加して実施し、Pd-l1異常の追加による造血器腫瘍発生率の変化、さらには発生した腫瘍の表現型の変化が明らかとなった。このように本年度は正常造血におけるPd-l1の生物学的意義およびPD-L1異常関連悪性リンパ腫の病態解析基盤の作製を完了することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
正常造血については当初の研究計画通り、Pd-l1の細胞分画特異的な機能を明らかにすることができ、PD-L1異常関連CRISPR in vivoスクリーニングについては、当初の経過である発症率解析や表現型解析のみならず、次年度に予定していた協調遺伝子異常解析や病態解析を既に開始している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はスクリーニングによって作製されたマウスPd-l1異常腫瘍モデルについて、得られた腫瘍組織を用いて、病理解析や遺伝子異常解析を行い、Pd-l1異常によるリンパ腫の病態解明を実施する。さらに付加的遺伝子異常との協調によってリンパ腫細胞特異的に変化しているパスウェイを同定することを試みる。また、Pd-l1異常による腫瘍免疫微小環境の変化をフローサイトメトリー解析などによって明らかにする。また薬剤介入による変化についても検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はマウス交配がきわめて順調であったために、マウスケージ維持に必要な費用が想定よりも低く抑えることができた。またコロナ禍により、プラスチック製品をはじめとする消耗品の購入が次年度となったことが次年度使用額が生じた主な原因である。次年度は当初の計画以上に得ることができたマウス腫瘍検体の病態解析のための次世代シークエンス関連費用が多く計上されるため、当初の次年度使用予定額と本年度からの繰越額の全額を使用予定である。
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