研究課題/領域番号 |
20K17417
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
中野 学 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (10436016)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 好塩基球 / アレルギー / P2Y6 |
研究実績の概要 |
好塩基球はヒスタミンなどのケミカルメディエーターを放出しアレルギー反応を誘発する。また、アレルギー反応に関与するTh2細胞の分化誘導や活性化に関与することが報告されており、アレルギー疾患治療の標的細胞として好塩基球が注目されている。我々は好塩基球の活性化を制御するため細胞外ヌクレオチド受容体に着目し検討している。これまでに、細胞外ヌクレオチド受容体であるP2Y6受容体の阻害剤がヒト好塩基球のIgE依存的活性化を抑制することを明らかにしてきた。 本研究課題では、P2Y6受容体阻害剤のアレルギー反応抑制効果を評価することを目的としている。2021年度は、アレルゲンを経皮的に感作し作製したアレルギーモデルマウスを用いてP2Y6受容体阻害剤のアレルギー反応誘発抑制効果を確認した。 はじめに生体内のP2Y6受容体阻害剤が好塩基球の活性化を抑制するか、アレルギーモデルマウスにP2Y6受容体阻害剤を経口投与および尾静脈投与し確認した。In vitroで好塩基球に活性化刺激を加えたところ、P2Y6受容体阻害剤を尾静脈投与したアレルギーモデルマウスの好塩基球で活性化が抑制された。次に、アレルギー反応誘発抑制効果を確認した。全身性アレルギー反応は直腸温度の測定、局所性アレルギー反応は色素漏出を測定することで評価した。P2Y6受容体阻害剤を投与することで直腸温度低下は軽減し、色素漏出量は低下した。更に、TNP-IgEを尾静脈投与したアレルギーモデルマウスでも、P2Y6受容体阻害剤の投与で全身性アレルギー反応による直腸温度の低下は軽減した。 これらの結果から、P2Y6受容体阻害剤が好塩基球活性化を抑制することよりアレルギー反応誘発が減弱したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の計画は、評価マウスの選定と評価方法の確立、P2Y6受容体阻害剤によるアレルギー反応誘発抑制効果の評価、P2Y6受容体阻害剤によるIgE産生に対する影響評価の3点に大別される。 2020年度は評価マウスの選定と評価方法の確立を行った。2021年度はP2Y6受容体阻害剤によるアレルギー反応誘発抑制効果の評価を行い、アレルギー反応の誘発を減弱することが確認できた。 これらのことから、本研究は「おおむね順調に進展している」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
アレルゲン経皮感作マウスを用いてP2Y6受容体阻害剤のIgE産生機序に対する影響を確認する。IgEは、IgM・IgG産生形質細胞がTh2系サイトカインのIL-4刺激によりクラススイッチが誘導されることで産生される。アレルゲン経皮感作でIgE産生を誘導する際P2Y6受容体阻害剤を投与し、IgE量やTh2系サイトカイン量を測定することでP2Y6受容体阻害剤のIgE産生への影響を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は順調に進み、2020年度からの次年度使用額もあったため次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、実験動物の飼育などに関わる消耗品費や学会参加の旅費、論文校閲費・投稿料として使用する予定である。
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