好塩基球はヒスタミン放出によるアレルギー反応誘導だけでなく、Th2系サイトカインを放出してB細胞のIgE産生やTh2細胞への分化に関与することが報告されている。我々は、細胞外ヌクレオチド受容体であるP2Y6受容体の阻害がヒト好塩基球のIgE依存的活性化を抑制することを明らかにしてきた。 本研究課題はP2Y6受容体阻害剤によるアレルギー反応抑制効果を評価することを目的としている。2022年度は、アレルギーモデルマウスを用いてP2Y6受容体阻害剤のTh2系サイトカイン産生やIgE産生に対する影響を確認した。 はじめにマウス脾細胞中のB細胞およびヘルパーT細胞のP2Y6受容体発現を測定した。次にOVA経皮感作によりIgE産生誘導したBALB/cマウスの脾臓細胞をP2Y6受容体阻害剤と培養し、培養上清中のIgEおよびTh2系サイトカインを測定した。続いてアレルゲン経皮感作時にP2Y6受容体阻害剤を尾静脈投与したBALB/cマウスの血清IgEと、培養した脾臓細胞の培養上清中のTh2系サイトカインを測定した。Th2系サイトカイン産生の確認では、脾臓細胞に活性化刺激を加えた。 ヘルパーT細胞はP2Y6受容体を発現し、活性化刺激した脾臓細胞によるTh2系サイトカイン産生はP2Y6受容体阻害剤により低下した。B細胞はP2Y6受容体が発現していたが、P2Y6受容体阻害による脾臓細胞のIgE産生量に変化は認められたかった。OVA経皮感作によるIgE産生誘導期間にP2Y6受容体阻害剤を投与すると血清IgE量は低下した。また、脾臓細胞によるTh2系サイトカインの産生量はP2Y6受容体阻害剤投与群で低下が確認された。 これらの結果は、P2Y6受容体阻害剤がTh2サイトカイン産生を抑制することでIgE産生量を低下すると示唆する。
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