研究課題/領域番号 |
20K17422
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
神谷 麻理 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 特任助教 (20844377)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 炎症性筋疾患 / 筋傷害 / 細胞死 / DAMPs |
研究実績の概要 |
1. 多発性筋炎(PM)マウスモデル(CIM)におけるプログラム細胞死(PCD)阻害剤の効果の検証:CIMに対してPCD阻害剤を投与すると、マウスの筋力が改善し、組織学的な筋炎の改善が認められた。 2. 筋のPCD制御を介した炎症抑制効果の検証:死細胞から放出される代表的damage associated molecular patterns (DAMPs)に分類される炎症介在因子のPM筋組織における発現を免疫染色にて検証したところ、壊死筋線維において同分子の発現亢進が認められた。CIMにおいても壊死筋線維における同分子の発現亢進が認められ、さらに非CIM誘導マウスと比較してCIMマウスの血清における同分子の濃度の著しい上昇が認められた。さらに、PCD阻害剤の投与によってその濃度は非CIMマウスと同程度にまで低下が認められた。また、CIM血清中のIL-1, IL-6などの炎症性サイトカイン濃度もPCD阻害剤の投与にて低下が確認された。また、PMのin vitroモデルにおいても、筋管細胞の単独培養と比較して、筋管細胞と細胞傷害性Tリンパ球(CTL)との共培養によって培養上清中の炎症介在因子の上昇が認められた。さらに、PCD阻害剤の前投与にて、培養上清中のこれらの炎症介在因子の濃度の低下が確認された。以上より傷害を受けた筋細胞において炎症介在因子の発現が亢進し、細胞死に伴い同分子は放出されると推測された。 3. 炎症介在因子の制御を介した筋炎抑制効果の検証 DAMPsがinnate adjuvantとして炎症を誘導することが知られることから、その阻害が筋炎を改善させるのではないかと着想し、CIMを用いて検証した。CIMに対して同分子の阻害抗体を投与することで、マウスの筋力が改善し、組織学的な筋炎の改善が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初本年度に予定していた、筋細胞死の阻害や、HMGB1の阻害による筋炎マウスモデル(CIM)の治療効果の検証を行うことができた。引き続き、PCD阻害がCIMのERストレスに及ぼす影響や、in vitroモデルにおける筋管細胞のRNA seqを行うための準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ネクロトーシス阻害がCIMのERストレスに及ぼす影響や、in vitroモデルにおける筋管細胞のRNA seqを行うための準備を進めている。 前者においては筋組織の溶解液を用いたウエスタンブロットの系の確立が、また後者においては共培養を行ったCTLと筋管細胞とを分離する手法の確立が必要であり、条件検討を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19蔓延のため、学会がオンライン開催となり旅費の支出が減ったためと、実験計画が順調に進んだことで消耗品の購入も最低限で済んだためと考えられる。2020年度の残金は2021年度に請求した助成金と合わせて、RNA seqやその準備に使用する予定である。
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