特発性肺線維症 (IPF) は予後不良な指定難病である。病巣部の樹状細胞を起点として炎症のカスケードが活性化し慢性的な炎症に伴い線維化が進展する。本研究では、独自の核酸デリバリー技術スーパーアパタイト(sCA)を用いて、マウス肺線維症の樹状細胞に効率よく核酸を送達することで、ナイーブT細胞から炎症性T細胞の活性化を抑制することで、IPFに対する核酸医薬を創出することを目的とした。ブレオマイシン投与後10日目に肺線維症モデルマウスから樹状細胞を回収し、その遺伝子発現とmicroRNA(miR)発現をRNAシークエンスで調べた。肺線維症の進展には樹状細胞が発現するCD80とCD86が重要であることが分かっており、これらは肺線維症モデルの樹状細胞で2倍以上に増加していた。これらCD分子のいずれかに結合し、IPFモデルで1.5倍以上低下しているmiRでヒトとマウスで共通配列をもつものは全部で12個存在した。そのうち半数はすでに報告のあるlet7系とmiR-139であったことから方法論は正しいことを裏付けている。マウスマクロファージ細胞J77Aへの核酸導入効率が良好なことをまず確認し、LPSによる刺激なしでは、CD80は20%陽性、CD86は100%陽性であった。しかしNegative control (NC)miRを導入しただけでCD80は95%陽性となり、6個の候補miRのうち2個のmiRで85%まで低下した。一方、CD86を低減させるmiRはなかった。CD80を低下させた二つのmiRは有望であるが、NCでもCDマーカーが高度に誘導されマクロファージ細胞は核酸自体を異物と認識する可能性があること、核酸導入剤(RNAimax)が刺激となっている可能性があることを踏まえ、マウス樹状細胞やsCAでの核酸導入法を用いて検討を進めている。
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