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2021 年度 実施状況報告書

極端な表現型に着目した新規自己炎症性疾患の原因遺伝子解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K17428
研究機関横浜市立大学

研究代表者

土田 奈緒美  横浜市立大学, 附属病院, 助教 (30847918)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード自己炎症性疾患 / 全エクソーム解析
研究実績の概要

自己炎症性疾患(autoinflammatory diseases, AID) は、周期性発熱・関節炎・皮膚炎などを主症状とし、あらゆる臓器に炎症を生じる希少難治病態の総称である。AIDは免疫にかかわる様々な分子の遺伝子変異に起因することが明らかになりつつあり、AIDの遺伝子解析に取り組んでいる。
(1)自己炎症疾患の新規原因遺伝子:重症あるいは非典型の極端な表現型を呈するAIDの2症例より、重要な炎症経路にあることは判明しているものの、今まで疾患との関連が報告されていない新規の原因遺伝子候補(遺伝子A・B)を見出している。現在、同遺伝子に変異を有する追加症例の検索と機能解析を進めている。
(2) 既知疾患遺伝子における新しい表現型:全エクソーム解析を通じてAIDの1つであるベーチェット病の家系例から既知の自己炎症性疾患の責任遺伝子Cに新規変異を検出した。遺伝子Cは他の自己炎症性疾患の原因と知られる既知の遺伝子であるが、これまでベーチェット病とのかかわりは報告されていないため、疾患発症との関連を検討している。
(3) VEXAS症候群の遺伝子解析:UBA1遺伝子の体細胞変異によって、後天性の炎症症候群であるVEXAS症候群が報告された。計13例の再発性多発軟骨炎患者(男性11例、女性2例)に対して、サンガーシーケンス、デジタルドロプレットPCR、PNA-clamping PCRを用いてUBA1遺伝子変異解析を行った。その結果、11例中8例の男性患者(男性例の73%)で同遺伝子に変異を検出し、解析結果・臨床像をまとめて論文報告を行った(Tsuchida et al., Ann Rheum Dis. 2021)。臨床像からVEXAS症候群が疑われる症例に対して、同様の解析手法を用いて遺伝子診断を行う系を検討している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1) 新規の原因遺伝子候補の遺伝子A・遺伝子Bに関して、以前からの共同研究施設や未診断疾患イニシアチブInitiative on Rare and Undiagnosed Diseases (IRUD)のモデル生物コーディネーティングネットワークプロジェクトによってマッチングしたモデル生物研究者と情報共有を行い、機能検証に着手している。
(2) AIDの家系例の全エクソーム解析から、既知遺伝子Cに新規変異を検出し、機能検証の準備を進めている。
(3) VEXAS症候群の責任遺伝子のUBA1遺伝子の変異を検出する系を確立し、再発性多発軟骨炎患者において高率に変異を同定することに成功した。同成果について、論文・学会報告を行った。他施設からもVEXAS症候群が疑われる患者検体を更に集積し、変異の検証を進めている。

今後の研究の推進方策

(1), (2) 新規の原因遺伝子候補の遺伝子A・遺伝子B、既知遺伝子Cの新規変異、それぞれの遺伝子に関して、機能検証を進める。
(3)VEXAS症候群におけるUBA1遺伝子解析のための症例集積を進め、臨床像や遺伝子変異スクリーニング法について検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

令和3年度に産前産後の休暇と育児休業を取得したため、休業中は研究解析を中断することになった。申請時には米国リウマチ学会に参加予定であったが、コロナウイルス感染拡大でWeb開催となり、旅費が不要となった。遺伝子解析に関して、申請時に予定していた全エクソーム解析以外の遺伝子解析手法によって変異同定に至った症例が複数あり、見込んでいた消耗品予算使用には至らなかった。
これまでの実績から、解析対象領域が予め想定できる症例に関しては、網羅的解析である全エクソーム解析以外の解析手法が望ましいことが分かった。令和4年度は、これまでに試みてきたサンガーシーケンス、PNA-clampingPCR、ディープシーケンス、デジタルPCRなどの各解析系やDNA抽出方法を比較検討する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] A case of VEXAS syndrome with Sweet's disease and pulmonary involvement2022

    • 著者名/発表者名
      Matsubara Akihiro、Tsuchida Naomi、Sakurai Mai、Maeda Ayaka、Uchiyama Yuri、Sasaki Kaneshige、Haji Yoichiro、Kirino Yohei、Matsumoto Naomichi、Morita Akimichi
    • 雑誌名

      The Journal of Dermatology

      巻: 49 ページ: e177-e178

    • DOI

      10.1111/1346-8138.16311

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Behcet's disease with a somatic UBA1 variant: Expanding spectrum of autoinflammatory phenotypes of VEXAS syndrome2022

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto H、Asano T、Tsuchida N、Maeda A、Yoshida S、Yokose K、Fujita Y、Temmoku J、Matsuoka N、Yashiro-Furuya M、Sato S、Irie K、Norikawa N、Yamamoto T、Endo M、Fukuchi K、Ohkawara H、Ikezoe T、Uchiyama Y、Kirino Y、Matsumoto N、Watanabe H、Migita K
    • 雑誌名

      Clinical Immunology

      巻: 238 ページ: 108996~108996

    • DOI

      10.1016/j.clim.2022.108996

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Tocilizumab in VEXAS relapsing polychondritis: a single-center pilot study in Japan2021

    • 著者名/発表者名
      Kirino Yohei、Takase-Minegishi Kaoru、Tsuchida Naomi、Hirahara Lisa、Kunishita Yosuke、Yoshimi Ryusuke、Nakajima Hideaki
    • 雑誌名

      Annals of the Rheumatic Diseases

      巻: 80 ページ: 1501~1502

    • DOI

      10.1136/annrheumdis-2021-220876

    • 査読あり
  • [学会発表] UBA1遺伝子変異を有する新規自己炎症性疾患VEXAS症候群・再発性多発軟骨炎患者の報告2021

    • 著者名/発表者名
      土田奈緒美, 内山由理, 桐野洋平, 國下洋輔, 峯岸薫, 吉見竜介, 中島秀明, 松本直通
    • 学会等名
      日本人類遺伝学会第66回大会
  • [学会発表] Pathogenic UBA1 variants in Japanese Patients with Relapsing Polychondritis.2021

    • 著者名/発表者名
      Tsuchida N, Kunishita Y, Uchiyama Y, Kirino Y, Takase-Minegishi K, Yoshimi R, Nakajima H, Matsumoto N.
    • 学会等名
      2021 American College of Rheumatology / Association of Rheumatology Professionals (ACR/ARP) Annual Meeting

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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