研究課題/領域番号 |
20K17433
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
櫻井 恵一 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (50805273)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / T細胞 / TCRレパトア / エピゲノム / RNA-seq |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、これまでに全身性エリテマトーデスに代表されるような自己抗体が陽性となる自己免疫疾患に特徴的なT細胞とB細胞の新たな細胞分画を見出した。この細胞群の性質を検討し疾患とのかかわりを検討したい。その際、トランスクリプトームプロファイルはその時点疾患の病勢に、エピジェネティックプロファイルは治療を続けていても再燃しうる自己免疫疾患が慢性疾患であるという特徴に関わっている可能性が高い。しかしながら、既存の解析技術で解析する場合、エピゲノム、トランスクリプトーム、のいずれかしか解析できない。これは倫理的に採血で回収できるサンプルから得られる細胞数の問題から、いずれかを優先せざるを得ないためである。さらに、この問題は現在技術が進みつつあるシングルセルレベルでの解析でも同様に問題となる。こうした問題を解決するため、既知の技術を応用して同時にエピゲノム、トランスクリプトームを少数細胞で同時に解析する技術を開発した。これにより、我々の研究にとどまらず、広く他の免疫疾患および免疫が介在した病態の病態解明のため、応用可能な遺伝子発現・エピゲノム解析の技術基盤を確立することを目標に研究を進めていく。本年度はそのための実際の実験系を確立するために予備実験を行うことに終始した。ただし、実験の性質上予備実験により綿密に条件を検討することが大切で、系が確立した後はスムーズに実験が進められると確信している
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年年末に発見され、その後パンデミックに至ったCOVID-19感染症の影響は多岐にわたり研究の推進に影響を与えている。特に病院に所属する大学医学部の教員である我々は非常に影響を受けたと言わざるを得ない。特に、定期的にスタッフをCOVID診療にとられることによる人員不足とそれによる一人あたりの臨床業務の増加、研究に従事できる時間のかなりの制限などがあり、実際に研究に割ける時間は非常に短くなった。 さらに、物流や通関および発注手続きについても非常に制限を受けた。当初、特にこの研究で肝となるシーケンサーの入手は2020年中に行うことを予定していた。しかし、業者との打ち合わせが困難となり、また発注を始めるに当たっても、通関手続きなどスムーズに行かないことが多くあり、結果的に本年度まで納入が遅延していたことが大きい。 ただ2020年度は発注などがやっとであったが、2021年頃からはわずかながら実験に時間が割けるようになるなど、COVID-19感染症と社会の共存が進むにつれ、制限が少しずつ解除されてきている。2022年度に爆発的にに進行するように計画を練っていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度、2021年度はCOVID-19感染症によって研究活動に非常に制限を受けた年度であった。そのため条件検討が本来であれば2021年には確立していく予定であったが、進められなかった。ただし、実験の特性として、条件検討を十分に行うことがもっとも重要なフェーズであり、ここをおろそかにするとデータの質に影響するのはもちろん、必要な予算にも多くの影響を与えてくる。解析できる症例数を増やすという野心的な目標も持ちつつ、実験系を早期に最適化したい。なお、実験系が最適化し確立されれば移行は解析がルーチン化しうる実験特性があり、確立後は爆発的に実験が進むと予想している。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染症により実験の進行が遅れていることが最大の原因である。大学病院職員でもある大学医学部教員はCOVID-19パンデミックに伴い、実際にCOVID-19感染症診療に従事しないと行けない期間が発生したり、またスタッフのCOVID-19感染症診療への派遣期間の人員不足に伴う臨床業務量の増加に対応せざるを得ず、それにより実際に実験を行う時間は非常に限られたものにならざるを得なかった。さらに、発注しておくと、試薬の使用期限が切れてしまうものが多いため、実験の進行に従って発注を行わざるを得なかった。さらに、一部の試薬や実験キットの通関の打ち合わせを業者と行うことが困難であったこともあり、発注および納入に時間がかかってしまった。以上の点から支出が先送りになってしまい、計画額との乖離が生じている。
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