研究実績の概要 |
コラーゲンゲル包埋気管支平滑筋細胞を用いた収縮アッセイには、ヒト由来気管支平滑筋細胞を用いている。細胞はその由来組織の通り入手性に難があり、かつ特定条件の細胞株を指定して継続的に入手することが難しいため、複数の細胞株より大量増殖ストックの作成保存と収縮アッセイ時の性能評価を行った。4つの販売ロットを基にそれぞれ培養増殖し、増殖活性が高く、継代数が増えても安定する細胞を大量培養して株化した。ゲル収縮アッセイにおいて十分な収縮活性を持ち、かつ収縮因子非存在下のコントロール群が明瞭となる性質の細胞株を選別した。 また、前年に引き続き、ステロイド抵抗性クローンの選抜を行うとともに、培養上清のELISA法によるサイトカイン産生の測定およびコラーゲン包埋気管支平滑筋細胞の収縮アッセイを行った。 一方で、ステロイド感受性から選抜した抵抗性系統が、長期の継代培養の継続とともにステロイド抵抗性を維持しないケースが確認された。これは、geneticな変異というよりは特定のシグナル因子による限定的なステロイド抵抗性の発現あるいはエピジェネティクスが示唆される。 また、通常IFN-γを産生するクローンがIL-4, IL-5,IL-13を産生するケースと、IL-4, IL-5,IL-13を主に産生するクローンにおいてIFN-γが確認されたケースがあった。しかし今回選抜したクローンの中にはTh1/Th2再分化の確定的証拠は得られなかった。Th1クローンは4系統全てに喘息反応の惹起が確認されている一方で、実験に供したTh2クローンの中に、動物モデルにおいて重篤な好酸球浸潤を誘発するものは複数確認されたが、呼吸機能の指標から即時型および遅発型喘息が確認されたクローンは無かった。クローン内におけるTh1/Th2サイトカインのアンバランスが細胞浸潤や呼吸機能にどのように影響するかは今後の課題である。
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