研究実績の概要 |
2022年度の研究計画としては、前年度から引き続き①RA患者における特徴的脂質メディエータープロファイルの評価、②脂質メディエーターによるbDMARD/tsDMARDsへの治療反応性予測、③脂質メディエーターによるbDMARDs/tsDMARDs-free寛解の予測を挙げていた。前年度まで、症例収集に努めてきたが、新型コロナウイルス感染症拡大による影響で十分な症例収集が困難であった。そこで、大幅に研究計画を変更し、関節炎モデルマウスを用いた包括的脂質メディエーター解析と新規バイオマーカーの探索を行うこととした。SKGマウスでの検討では、関節炎マウスはコントロールマウスと比較し、関節局所のProstaglandinE2やThromboxaneB2など多くの炎症惹起脂質メディエーターが上昇していた。一方、炎症収束脂質メディエーターについてはResolvinD5、Maresin2など一部のもののみしか上昇しておらず、関節炎マウスでは脂質メディエーターのバランスが炎症惹起>炎症収束となっていることが示唆された。試験管内で、ResolvinD5はT細胞分化と破骨細胞分化を抑制したことからResolvinD5をはじめとした炎症収束脂質メディエーターが実際に関節炎に対し抑制的に働いているものと考えられ、これらの結果を学術誌に報告した(Yamada H, et al. Sci Rep. 2021.)。 さらに、我々はSKGモデルとは別の関節炎モデルマウス(CIAモデル)を用いて、脂質メディエーター解析を行った。CIAモデルではSKGモデルと同様の結果は得られなかったが、腸内細菌由来の脂質代謝物において関節炎との関連が認められた。この結果を元に、今後、関節炎、腸内細菌由来の脂質代謝物、腸内細菌叢の3者の関連を検討していく予定である。
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