研究課題/領域番号 |
20K17443
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
石崎 淳 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師(病院教員) (00620527)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ANCA関連血管炎 / 顕微鏡的多発血管炎 / 多発血管炎性肉芽腫症 / バイオマーカー / TIMP-1 / CD93 |
研究実績の概要 |
1) AAVの寛解導入および維持療法期における血清マーカーのELISA定量解析 当院およびANCA関連血管炎・急速進行性糸球体腎炎の寛解導入治療の現状とその有効性と安全性に関する観察研究(RemIT-JAV-RPGN)登録患者(n=69, 顕微鏡的多発血管炎(MPA) 46名, 多発血管炎性肉芽腫症(GPA) 23名)における治療18ヶ月後までの臨床転帰と血清TIMP-1値を比較解析した。治療6ヶ月時の非寛解群(n=17)は寛解群(n=52)と比較し有意にTIMP-1値が高値であった。寛解患者における6ヶ月時のTIMP-1値は、治療6~18ヶ月に再燃もしくはスロイド減量困難の患者群(n=14)で寛解維持群(n=31)よりも有意に高値であった(176 vs 144 ng/mL, p=0.004)。また、当院で維持療法中のAAV患者30名(MPA 16名、GPA 14名)において、経時的に血清TIMP-1値を測定し、再燃群(n=5)のTIMP-1値は寛解維持群(n=25)と比較し、再燃時、再燃3ヶ月前および6ヶ月前で有意に高値であり、CRPよりも早期に上昇を認めた。 両解析において、寛解維持療法中にTIMP-1値が150ng/mL以上であれば約30%の患者で6-12ヶ月後に再燃したが、150ng/mL未満であればほぼ全例で少なくとも12ヶ月の寛解を維持しており、血清TIMP-1値は寛解維持期における寛解維持予測および再燃予測に有用なマーカーとなることが示唆された。 2) CD93欠損マウスのフェノタイプ解析とMPO欠損マウスの作製 AAVの惹起に必要となるミエロペルオキシダーゼ(MPO)欠損マウスをCRISPR/Cas9法を用いて作製した。ジェノタイピングではホモ接合型マウスのMPO標的配列(55塩基)の欠損を確認し、ウェスタンブロッティングで骨髄中のMPO欠損を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に基づき、当院およびRemIT-JAV-RPGN登録患者を対象に、寛解導入期および維持療法期における血清TIMP-1値の定量解析はすでに終了し、寛解維持予測および再燃予測マーカーとしての有用性を見出している。また、ANCA関連血管炎におけるCD93の病態への関与を解析するため、AAVの惹起に必要であるMPO欠損マウスはすでに作製済みである。また、我々が既に作製したCD93欠損マウスと野生型B6マウスについて、骨髄、胸腺、脾・肝臓、末梢血における免疫担当細胞の表現型をFACS解析で比較している。また、前述の臓器に加えて肺、心臓、腎臓、腸管、生殖器の病理組織標本を比較解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
ANCA関連血管炎モデルを作製するため、MPO欠損マウスにMPOで免疫し、抗MPO抗体とMPO感作脾細胞を作成する。これらをCD93欠損マウスおよび野生型B6マウスに移入し、半月体形成性糸球体腎炎や出血性肺毛細血管炎の発症率を比較することで、ANCA関連血管炎の病態へのCD93の関連を解析する。厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班が主導で行っている前向きコホート研究「高安動脈炎と巨細胞性動脈炎の診断・治療の現状と有効性に関する前向き観察研究」に登録された患者血清試料を用いて、新規活動性マーカー候補(TIMP-1、CD93、TKT、TNC、LRG1)をELISA法で測定し、経時的な臨床データ(疾患活動性、罹患血管、再燃や血管狭窄・拡張の進行の有無)と血清マーカーとの関連を解析し、大型血管炎の有望な活動性マーカーを同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)大型血管炎の患者血清を現在も収集中であり、今後、活動性マーカー候補の経時的な定量解析を予定している。このため、一部の研究費を次年度に繰り越す。次年度も研究計画書に従い、研究費を使用し研究を遂行していく予定である。 (使用計画)ELISAキットに充当予定。
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