研究課題/領域番号 |
20K17444
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
住吉 玲美 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (70859363)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 特発性多中心性キャッスルマン病 / Th1 / Th17 / IGFBP-1 |
研究実績の概要 |
2018年9月以降に当院および関連施設で診断された特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)患者を対象とした。 方法)トシリズマブ(TCZ)で治療中の(n =7; iMCD-NOS: n =5, iMCD-TAFRO: n =2)の末梢血のフローサイトメトリー解析を行った。末梢血より単離したPBMCをT細胞の各種表面マーカーで染色し、FACS Verseにて各種蛍光強度/populationを測定した。 結果)CD3+ CD4+ CD45RA- CCR7- のeffector memory T細胞におけるTh1・Th2・Th17・Th17.1の割合については、iMCD-NOSとiMCD-TAFROの比較では、iMCD-TAFROにおいてTh17の割合が高い傾向があった。また、TCZ効果不十分例 (n =2) ではTh1の割合が低い傾向があった。CD3+ CD4+ CD45RA- T細胞におけるTfh・Tphの割合はiMCD-TAFROでは低い傾向があった。次に、血清蛋白の解析を行った。 方法)RayBio Label-based (L-Series) Human Antibody Array L-507を用いて、網羅的に蛋白を測定し、L-507で治療前後に変化の大きかった蛋白(IGFBP-1)をELISA Kitで測定した。 結果)L-507によるTCZ治療前後の解析(iMCD-NOS: n =4, iMCD-TAFRO: n =2)では、TCZ有効例 (4例) において、共通して減少率の高い蛋白としてIGFBP-1が抽出された。ELISA KitによるIGFBP-1の解析(iMCD-NOS: n =8, iMCD-TAFRO: n =6, 健常人: n =28)では、健常人と比較するとiMCD患者ではIGFBP-1が高い傾向があり、特にiMCD-TAFROでより高値であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
病型の違い(iMCD-TAFROとiMCD-NOS)によるT細胞分画の割合の違いや治療反応性による違いについて、傾向が出てきているが、まだ症例数が必要と考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
1.共同研究施設からの検体も集めてフローサイトメトリー解析を行う症例数を増やし、Th1やTh17,Tph,Tfhについて、病型や治療反応性に関して一定の傾向があるか検討する。 2.IGFBP-1について、関節リウマチなどの他の炎症性疾患についての検討も行い、iMCD症例と比較する。 3.PI3K/Akt/mTOR経路がどの細胞分画で活性化しているかを明らかにする。Thサブセット(特にTfhやTph等)やB細胞、単球におけるmTORの活性化をS6蛋白のリン酸化を指標に評価する。 4.CD4陽性T細胞のRNAシーケンスを行い、pathway解析にて血清IGFBP-1高値症例で活性化しているシグナルを同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画調書、交付申請書に記載していた計画のうち、旅費についてはCOVID-19の流行により学会がweb開催となったため、旅費の使用がなかった。また、リンパ節組織・末梢血のフローサイトメトリー解析については、令和2年度は新規患者数がかなり少なかったため、想定していたほどフローサイトメトリー解析が行えず、それらの試薬等で予定していた研究費は次年度持ち越しとなる。なお、iMCDの病態との関連が示唆される蛋白であるIGFBP-1については、令和3年度に他の炎症性疾患患者や他施設からの血清を収集して追加実験を行う予定であり、その試薬の購入等に充てる。RNAシーケンスについては、研究計画当初は予定がなかったが、血清IGFBP-1高値症例で活性化しているシグナルを同定するために、CD4陽性T細胞のRNAシーケンス解析を行うこととなり、費用が嵩むことが判明したため、令和2年度の予算の一部を、令和3年度にRNAシーケンス解析を行うのに必要な試薬を購入するために使用する予定である。
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