研究課題/領域番号 |
20K17447
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
三浦 陽子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (60563517)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 骨性強直 / 滑膜線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
関節リウマチや変形性関節症を含む関節疾患は、関節局所でのパンヌスの形成や骨破壊等が知られ、炎症終焉時には異所的な骨製強直 (骨過形成) を生じる。本研究では、異所的な骨形成のメカニズムを解明するため、以下の検討を進めている。①滑膜線維芽細胞のRNA・タンパク質の発現を明らかにする (2020~2021年)。②滑膜線維芽細胞が軟骨細胞や骨細胞へ分化するメカニズムを検討する (2021年~2022年)。本年度は、関節炎症時のパンヌスより線維芽細胞を単離し、骨細胞へ向かう可能性のある細胞集団を見出すため、滑膜線維芽細胞のRNA・タンパク質発現を検討した。 パンヌスより滑膜線維芽細胞を単離し、1週間ほど培養してFlow cytometerを用いてタンパク質発現を検討した。その結果、約20%がCD11b陽性のマクロファージであり、CD11bネガティブ集団をさらに、CD146とPlatelet derived growth factor receptor a (PDGFRa) で分離した。そこで、CD146陽性集団、PDGFRa陽性集団、すべて陰性の3種類の集団を採取し、Col10a1、Runx2、Sox9の遺伝子発現量を検討した。パンヌスと比べて、これらの3つの集団はいずれもCol10a1、Runx2、Sox9の遺伝子発現は高値を示したが、最もCol10a1、Runx2、Sox9が高値を示した集団は、CD146 陽性集団であった。CD146陽性集団は骨分化マーカーを高く発現する集団であり、骨の過形成に関与する可能性が示唆された。今後は、単離した滑膜線維芽細胞における各4集団のさらなる遺伝子発現、タンパク質発現の検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、①滑膜線維芽細胞のRNA・タンパク質の発現を明らかにすることを目的として研究を進めた。内容は以下のとおりである。 1.関節炎に対し高感受性を示すD1BCマウスに対し、low-doseのウシII型コラーゲンの免疫による関節炎の誘導を行った。 2.パンヌスより滑膜線維芽細胞を単離し、約1週間の培養の後、Flow cytometerを用いてタンパク質発現を検討した。 3. パンヌス由来滑膜線維芽細胞を、Ariaを用いてCD146、PDGFRaでCD146陽性集団、PDGFRa陽性集団、すべて陰性の3種類の集団を採取し、Col10a1、Runx2、Sox9の遺伝子発現量を検討した。 本検討により、Col10a1、Runx2、Sox9遺伝子発現の高い集団は、CD146陽性集団に存在することが明らかとなった。よって、CD146を指標に細胞を採取することで骨分化へ向かう集団の分離が可能となった。今後はこの3種類の集団内でのさらなるRNA解析を進め、骨分化へ向かううえでどのような特徴的な遺伝子発現があるかを検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の検討により、骨分化へ向かう滑膜線維芽細胞集団が明らかとなった。そこで、2021年度は、2020年度に引き続き骨分化へ向かう滑膜線維芽細胞集団のさらなるRNA、タンパク質解析を進める予定である。また、骨分化へ向かいやすいと考えられるCD146 陽性集団は、骨分化用培地内で他の集団に比べて早期に骨分化するかどうかを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の実験状況により繰越額が生じた。繰越額は次年度に繰り越しして消耗品、試薬費等として充てる予定である。
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