研究実績の概要 |
関節リウマチや変形性関節症を含む関節疾患は、関節局所でのパンヌスの形成や骨破壊等が知られ、炎症終焉時には異所的な骨性強直 (骨過形成) を生じる。パンヌス形成から骨破壊に至る過程には不明点が多い。我々は、ヒト関節リウマチと類似した関節炎モデルを構築した。その検討の中で、組織学的にパンヌスの滑膜線維芽細胞において、骨分化マーカーであるRunx2、Sox9、Col10a1陽性、Runx2のみ陽性、すべて陰性の3種類の細胞集団が存在することを見出した。そこで、本研究では、異所的な骨形成のメカニズムを解明することを目的とし、検討を進めた。 D1BCマウスに低用量のType II Collagenを免疫し、関節炎を誘導した。関節炎のパンヌスより滑膜線維芽細胞を無菌的に単離および、1週間培養した。滑膜線維芽細胞はこれまでの試験でCD140a (Platelet derived growth factor receptor a, PDGFRa) 陽性、陰性に分けられることを見出している。そこで、Flow cytometerで滑膜線維芽細胞をCD146とCD140aで展開し、CD146high陽性集団、CD146mid陽性集団、CD140a陽性集団、すべて陰性の4種類の集団を採取し、qPCRおよびRNAseqを行った。その結果、CD146mid集団は約5%存在した。qPCRにより、CD146mid集団はCol10a1、Runx2、Sox9の遺伝子発現が上昇した。CD140a陽性集団もRunx2、Sox9が高値を示していたが、Col10a1遺伝子発現の上昇がCD146mid集団と比べて低かった。以上の結果から、CD146mid集団が組織像で確認していた最も肥大化軟骨細胞様の表現型を示すパンヌスの線維芽細胞である可能性が示唆された。
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