全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus: SLE)は、核酸に対する自己抗体の産生や免疫複合体沈着による組織炎症を特徴とした全身性の自己免疫疾患で皮膚、関節、腎臓など様々な臓器に炎症をきたす。SLE病態で重要な役割を果たすサイトカインとしてIFNα(Interferon α)が注目されているが、未だにその産生機序や産生源については不明な点が多い。 これまでの研究で、形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cell : pDC)が主要なIFNα産生細胞と考えられていたが、申請者らは新たに細胞内核酸受容体であるcyclic GMP-AMP synthase (cGAS)-stimulator of interferon genes (STING) 経路を介して単球からもIFNαが産生されることを初めて見出した。またSLE患者の単球でIFNα産生能が亢進しその産生能はSLEの疾患活動性と相関したことから、SLE病態へのより強い関与を想起し、STING経路を刺激したSLE患者及び健常人由来の単球をIFNα産生細胞/ IFNα産生非細胞に分離しRNAシークエンスで解析した。 その結果、SLE患者のIFNα産生単球でGATA4の発現が有意に亢進していることが判明した。GATA4は腸管などの分化誘導を制御する転写因子であるが、酸化ストレスにより損傷DNAが蓄積した際に細胞が増殖を停止する細胞老化(senescence)で発現が誘導される。損傷DNAがcGASなどの核酸受容体に感知されるとサイトカイン産生が亢進するSASP(senescence-associated secretory phenotype)が起こる。GATA4がSASPに関与することから、SLE病態形成に関わる新たな因子として解析を進める。
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