研究実績の概要 |
既存の研究は、臍帯血中のアレルゲン特異的IgG4抗体価がその後の児のアレルゲン特異的IgE抗体価と負に関連することを指摘した。今回、妊娠中の母体における便中マイクロバイオームが臍帯血中のアレルゲン特異的IgG4抗体価に与える影響を検討するために研究を行った。 研究は、アトピー性皮膚炎のハイリスク児を対象とした出生コホート研究(HiRAD)に参加している母体の中で、本研究への参加に同意を得た母体とその児とした。まず、臍帯血中の鶏卵関連特異的IgG4抗体価と生後6ヶ月時の児の鶏卵関連特異的IgE抗体価との相関関係を検討した。次に妊娠中期の便マイクロバイオームのデータと出生時の臍帯血における鶏卵関連特異的IgG4抗体価について相関関係を確認した。 研究開始後、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、当該出生コホートの新規リクルートが困難になり、マイクロバイオームと臍帯血の両方のデータが得られた児は27名であった。臍帯血の卵白特異的IgG4抗体価と生後6ヶ月のオボムコイド特異的IgE抗体価は弱い負の相関関係(r=-0.426,P=0.027)を認めた。これまでの研究と同様に臍帯血の鶏卵関連特異的IgG4抗体価と出生後の鶏卵関連特異的IgE抗体価とに負の関係があることが示された。次に、母のマイクロバイオームと臍帯血中の鶏卵関連特異的IgG4の関連では、便でButyrate.producing bacterium M212, Coprococcus catusに正の相関を認め、Olsenella.spで負の相関を認めた。 正の相関関係を認めた菌はいずれも酪酸を産生する菌として知られる。既存の研究で酪酸産生菌はアレルギー炎症を抑制する可能性が示唆されており、本研究では母体の便中の酪酸菌の存在が臍帯血中のIgG4と関連し、その後の児の食物アレルギーに影響する可能性について示唆した。
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