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2020 年度 実施状況報告書

ボツリヌス菌が産生する膜小胞の病態生理学的意義の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K17462
研究機関金沢大学

研究代表者

小林 伸英  金沢大学, 医学系, 助教 (30712799)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワードボツリヌス菌 / ボツリヌス毒素 / メンブレンベシクル
研究実績の概要

ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)が産生するボツリヌス毒素は、全身の筋弛緩から重症例では致死的な呼吸失調に至る神経症状を引き起こす。腸管ボツリヌス症では、腸管に定着したボツリヌス菌に宿主は長期間晒されるが、毒素以外の菌体成分がボツリヌス症に与える影響は全くわかっていない。一方、細菌が分泌する膜小胞(membrane vesicle: MV)が、細菌毒素の運搬や宿主の免疫系の調節に重要な役割を果たすことが明らかになってきている。そこで本研究では、ボツリヌス菌が産生するMVが宿主に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
当該年度は、ボツリヌス菌由来MVがボツリヌス毒素の吸収に及ぼす影響を解析した。ボツリヌス菌E型Iwanai株の培養上清からMVを精製し、マウスに経口投与したところ、MV単体ではボツリヌス症を発症させなかったが、事前にMVを経時的に投与することで精製ボツリヌス毒素(M毒素)の経口毒性を高めることが明らかとなった。MVを経時的に投与したマウスでは経口投与した蛍光デキストランの血中移行に指標される腸管透過性の亢進が見られた。このことから、ボツリヌス菌MVは腸管バリア機能を低下させると考えられた。MVが直接的に上皮細胞に及ぼす影響を解析するため、単層培養した腸管上皮細胞株にMVを添加したが、頂端膜側、基底膜側のいずれに添加した場合でも経上皮電気抵抗値に指標されるバリア機能の低下は見られなかった。一方で、単層培養した腸管上皮細胞株の基底膜側でマクロファージ細胞株を共培養したところ、基底膜側にMVを添加した場合のみ、バリア機能の低下が見られた。以上の結果から、ボツリヌス菌MVは腸管上皮細胞のバリア機能を直接破壊するのではなく、免疫細胞を介した間接的な作用であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度は、ボツリヌス菌由来MVが精製ボツリヌス毒素の経口毒性を高めること、MVを投与したマウスでは腸管バリア機能が低下していることを明らかにした。ボツリヌス菌において毒素複合体以外の宿主への作用は研究されておらず、本研究によって初めてMVが宿主に与える影響を見出した。さらに、バリア機能の低下は腸管上皮細胞への直接作用ではないという結果が得られており、その作用機序についても足掛かりを得ている。以上より、研究は順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

In vitroにおいてボツリヌス菌由来MVは免疫細胞を介して上皮バリア機能を低下させた。一般に炎症により腸管バリア機能は低下することから、MVに対する免疫応答がバリア機能の低下をもたらす可能性が考えられる。そこで次年度は、MV投与マウスの表現型を詳細に解析するとともに、培養細胞を用いてMVに対する免疫応答を詳細に解析する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021 2020

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] ボツリヌス菌が産生するメンブレンベシクルに対する宿主応答の解析2021

    • 著者名/発表者名
      小林伸英
    • 学会等名
      第94回日本細菌学会総会
  • [学会発表] ボツリヌス菌が産生するメンブレンベシクルによる宿主調節機構の解析2020

    • 著者名/発表者名
      小林伸英
    • 学会等名
      第34回日本バイオフィルム学会学術集会・第57回日本細菌学会中部支部総会

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公開日: 2021-12-27  

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