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2022 年度 実施状況報告書

抗インターフェロン能欠失ウイルスを用いたメタニューモウイルスの予防・治療法の研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K17463
研究機関福井大学

研究代表者

田中 幸枝  福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (10197486)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードヒトメタニューモウイルス / インターフェロン / アクセサリー蛋白質
研究実績の概要

モノネガウイルス目ニューモウイルス科に分類されるヒトメタニューモウイルス(HMPV)は、同科のヒトRSウイルスとならんで乳幼児、高齢者、易感染者に下気道感染症を起こしやすいため、有効なワクチンや治療薬の開発が望まれている。それらの標的の一つとして抗ウイルス免疫において中心的な役割を担うインターフェロン(IFN)に抵抗性(抗IFN能)を示すHMPV M2-2蛋白質の研究が進められている。しかし、現在のM2-2蛋白質欠損HMPVは抗IFN能以外の増殖に関わる機能まで喪失するため、十分な量のウイルスを得ることは難しい。
そこで本研究では、HMPVの抗IFN機構の全容を解明し、その情報をもとに抗IFN能のみを欠失した組換えウイルスをデザインすること、それによってHMPV感染における抗IFN能の役割、抗HMPV免疫におけるIFNの重要性を明らかにし、ワクチンや治療薬の開発のための情報を入手することを目的とした。これまでに、M2-2蛋白質の抗IFN機構を解析する過程で、既報の抗TLR7/9能に加えてRIG-Iを介するIFN産生シグナルを抑制する抗RIG-I能が存在することを発見した。そこで、抗TLR7/9能、抗RIG-I能の責任領域を決定し、ウイルスの増殖調節能には影響を及ぼさず抗IFN能のみを喪失する変異M2-2蛋白質をデザインした。現在、それらの変異M2-2蛋白質を発現する組換ウイルスを作製し、ウイルスの増殖を損なわずに抗IFN能のみを欠失したウイルスの回収を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初、M2-2蛋白質の2つの機能(抗TLR7/9能とウイルスの増殖調節能)を分離するために、欠失および点置換変異を施した変異M2-2蛋白質を用いて、ウイルスの増殖調節能には影響がなく抗TLR7/9能のみを喪失する変異M2-2蛋白質を作製する計画であった。しかし解析過程で、抗TLR7/9能に加えて抗RIG-I能を見いだしたので、計画を変更してまず抗RIG-I能の解析を行った。2020 - 21年度に、変異M2-2蛋白質をデザインして抗RIG-I能のメカニズム、責任領域を決定した。同様に抗TLR7/9能とウイルスの増殖調節能についても評価した。その結果、ウイルスの増殖調節能には影響を及ぼさず抗IFN能のみ喪失した変異M2-2蛋白質を作製できた。作製した変異M2-2蛋白質のうちM2-1遺伝子との重複により適用できない変異があることが判明し、一部の変異体を作り直した。2022年度に、各変異M2-2蛋白質を発現する組換えウイルスを作製し、IFN非産生細胞では増殖するがIFN産生細胞では増殖が抑制される組換えウイルスを選別して目的のウイルスを回収した。

今後の研究の推進方策

2023年度は、2022年度に作製した抗IFN能のみを欠失した変異M2-2蛋白質を発現する組換えウイルスを用いて、ワクチンや治療薬開発のための基盤情報を収集する。

次年度使用額が生じた理由

当初の研究計画よりやや遅れているため、2022年度に計画していた組換えウイルスの作製に必要な経費を2022年度から2023年度に後ろ倒しで使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Human metapneumovirus M2-2 protein inhibits RIG-I signaling by preventing TRIM25-mediated RIG-I ubiquitination.2022

    • 著者名/発表者名
      Yukie Tanaka, Naoko Morita, Yoshinori Kitagawa,Bin Gotoh and Takayuki Komatsu
    • 雑誌名

      Frontiers in Immunology

      巻: 13 ページ: 970750

    • DOI

      10.3389/fimmu.2022.970750

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ヒトメタニューモウイルスのインターフェロンβ産生シグナル抑制機構2022

    • 著者名/発表者名
      田中幸枝,森田奈央子,小松孝行
    • 学会等名
      第59回日本細菌学会中部支部総会
  • [学会発表] ヒトメタニューモウイルスM2-2蛋白質はTRIM25を介したRIG-Iのユビキチン化を阻害してRIG-Iシグナルを遮断する2022

    • 著者名/発表者名
      田中幸枝,森田奈央子,小松孝行
    • 学会等名
      第69回日本ウイルス学会学術集会
  • [学会発表] NLRP3インフラマソーム活性化に関わるヒトRSウイルスタンパク質2022

    • 著者名/発表者名
      森田奈央子,田中幸枝,小松孝行
    • 学会等名
      第69回日本ウイルス学会学術集会

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公開日: 2023-12-25  

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