新生児感染症は重症化しやすく、敗血症に至ったとき死亡率は 13~25%と高いが、標準的な微生物検査法での病原微生物同定率が低いため診断が難しい。本研究の目的は、新生児感染症発症時に採取した臨床サンプルに対して ショットガンメタゲノム解析を行うことで、新生児感染症の病原微生物と新生児敗血症発症因子を明らかにすることである。 昨年度につづき、新生児感染症患者の急性期より採取した血液、胃液のマイクロバイオーム解析を行なった。血液は血流感染症の診断において最も重要な臨床検体であり、血液中マイクロバイオームに有意に存在する微生物を検出することで病原微生物候補を挙げることができる。一方で、出生直後の新生児の胃液の主成分は羊水であることから、そのマイクロバイオーム解析により子宮内感染を予測できると考えた。 各サンプルから抽出された核酸よりDNAライブラリーを作成し、次世代シークエンス解析を行なった。その結果、得られたFastQデータはPATHDETパイプラインによりメタゲノムデータとして出力され、現在解析中である。PATHDETパイプラインは、FastQファイルのクオリティーコントロールを行なったのちにヒトゲノムを抽出・除去し、のこされた非ヒトゲノム由来のシークエンスデータをさまざまな微生物に分類・推定を自動で行うパイプラインである。その後のメタゲノム解析は、具体的には、各患者の血液と胃液のメタゲノムデータ間の微生物集団の類似度を計算、階層的クラスターを作成し、それぞれに特徴的に出現する微生物種を検索する。さらに、この時抽出された微生物種が、新生児感染症患者クラスターを特徴づける、または重症度等の指標となるかを確認する方針である。
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