本研究では、①細菌性肺炎マウスモデルの作成、②マクロライド系抗菌薬やオキサゾリジノン系抗菌薬による肺炎の重症化抑制の検証、③肺から肺胞上皮細胞の単離、④次世代シーケンサを用いた細胞の解析を実施して、細菌性肺炎における肺胞上皮細胞の変化および急性呼吸促迫症候群(ARDS)に関連する因子および抗菌薬の抗菌作用のメカニズムを解明することを目的としている。本年度は、重症細菌性肺炎マウスモデルの作成を実施した。菌株については、先行研究でも使用したKlebsiella pneumoniaeのKEN-11株(ESBL産生)および43816 serotype2(43816-2)株を使用した。KEN-11株では先行研究と同様の10^6CFU/mouseの濃度でBALB/cマウスおよびC57BL/6マウスに経気管投与した。また、43816-2株はこれまで使用したことがない菌株であったため、10^6、10^4、10^2 CFU/mouseの濃度でC57BL/6マウスに経気管投与した。KEN-11株ではBALB/cでは感染48時間以内、C57BL/6では感染72時間以内に全てのマウスが死亡し先行研究と同様の結果が得られた。また、43816-2株では10^6では感染72時間以内に全てのマウスが死亡し、10^4および10^2では感染168時間後の生存率が33.3%、66.7%と濃度依存性に死亡率が増加した。10^2については生存率は高いものの、感染168時間後の時点で肺内生菌数が6.3±1.6 log10(CFU/lung)と肺炎が治癒せずに持続していることが確認された。これらの結果から、重症肺炎マウスモデルとしてはKEN-11株および43816-2株の高菌量経気管投与、軽症~中等症肺炎マウスモデルとしては43816-2株の10^2CFU/ml経気管投与を用いて今後の検証を行なっていく方針とした。
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