研究課題
βラクタム系薬はその高い安全性から、たとえ従来の基準で薬剤耐性と判断された病原体においても、抗菌作用が得られる濃度を安定して推移させることで、治療効果が得られる可能性がある。本研究ではtherapeutic drug monitoring(TDM)により、βラクタム系薬の濃度を有効濃度域で確実に推移させることにより、その治療成績及び安全性を評価することである。2020年度は22名(うち、耐性菌の治療で6名を含む)の患者において治療目的でβラクタム系薬のTDMを実践した。その結果、やはり従来の基準で薬剤耐性と評価された場面において、本手法を適用することにより、より毒性の高い抗菌薬の使用を避けることが可能な症例を認めた。一方で、治療失敗が許されない発熱性好中球減少症において使用されたβラクタム系薬投与中に中枢神経障害の副作用を認めた患者において、TDMを実践した。その結果、生理機能からは想像のつかない高濃度を認めたことが明らかとなり、本薬による影響が強く懸念された。これらのデータについてさらに集積を行い、その評価を行う予定である。また高速液体クロマトグラフィーによる血中濃度測定系についてもさらにブラッシュアップを続けており、βラクタム系薬としては現在9剤を迅速に測定することが可能である。本研究において、臨床現場においてβラクタム系薬のTDMを実践することで薬剤耐性菌に関連する諸問題の解決策の一端を担うとともに、安全性を最大限に高めた医療を患者に提供していく所存である。
2: おおむね順調に進展している
薬剤耐性菌の検出歴および治療必要性に応じて本手法は適用される。2020年度は6名と年間目標の10名には届いていないが、それまでの検出患者による評価も含めると、おおむね順調であると判断sなれる。
引き続き薬剤耐性菌の検出歴および治療必要性に応じて本手法の適用を検討していく。同時に、測定可能なβラクタム系薬の拡大を図る。2020年度は4剤の拡大が行われた。
新型コロナウイルス感染症に対する対応を迫られ、また学会発表等がWeb開催となったことから出張、移動に関する支出も大幅に減少した。今年度はそもそも予定していた試薬等の発注を進めるとともに、削減された出張費等を備品の購入に充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
Journal of Infection and Chemotherapy
巻: 26 ページ: 1158~1163
10.1016/j.jiac.2020.06.007