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2022 年度 実施状況報告書

βラクタム系薬の効果最大化が切り開く耐性菌の個別MICを活用した感染症治療新展開

研究課題

研究課題/領域番号 20K17467
研究機関熊本大学

研究代表者

尾田 一貴  熊本大学, 病院, 薬剤師 (00753328)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード抗菌薬 / 薬剤耐性菌 / TDM / HPLC / βラクタム系薬
研究実績の概要

βラクタム系薬はその高い安全性から、たとえ従来の基準で薬剤耐性と判断された病原体においても、抗菌作用が得られる濃度を安定して推移させることで、治療効果が得られる可能性がある。本研究ではtherapeutic drug monitoring(TDM)により、βラクタム系薬の濃度を有効濃度域で確実に推移させることにより、その治療成績及び安全性を評価することである。2022年度は18名(2020年度は21名)(うち、耐性菌の治療で3名を含む)の患者において治療目的でβラクタム系薬のTDMを実践した。その結果、やはり従来の基準で薬剤耐性と評価された場面において、本手法を適用することにより、より毒性の高い抗菌薬の使用、およびさらに広域の抗菌薬使用を避けることが可能な症例を認めた。これらのデータについてさらに集積を行い、その評価を行う予定である。また高速液体クロマトグラフィーによる血中濃度測定系についてもさらにブラッシュアップを続けており、βラクタム系薬としては現在13剤を迅速に測定することが可能である。また、安全性の観点からもβラクタム系薬のTDMの意義が示されつつある。濃度依存性に発症する意識障害、脳症が報告されているセフェピムに関し、その鑑別の目的で血中濃度測定を実施すると、いずれも通常よりも高い濃度推移を認めた。感染症診療においては投与量不足をまず回避することが重要であることから、セフェピムに関する中枢神経性有害事象を回避するためにはTDMが有用であると考えられる。
本研究において、臨床現場においてβラクタム系薬のTDMを実践することで薬剤耐性菌に関連する諸問題の解決策の一端を担うとともに、安全性を最大限に高めた医療を患者に提供していく所存である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

薬剤耐性菌の検出歴および治療必要性に応じて本手法は適用される。2022年度は3名と年間目標の10名には届いていないが、それまでの検出患者による評価も含めると、おおむね順調であると判断される。

今後の研究の推進方策

本年度において実施された耐性菌治療に関するβラクタム系薬の血中濃度測定及び投与量最適化の実績を踏まえ、論文執筆を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由として、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、学会(国際学会含む)への参加が滞ったこと、および論文作成に関する英語校正について、スムーズにアクセプトされたことによるコストダウンが図れたこと、さらには血中濃度測定系の確立に関して、スムーズに達成できたことによる消耗品の削減が図れたことなどが挙げられる。
翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画として、使用している機器のメンテナンスが必要になる時期でもあることから、ある程度大きな金額を必要とすることが挙げられる。さらには、今年度は新型コロナウイルス感染症流行の縮小も予見されることから、各種学会への参加費用として計上されることが挙げられる。そして、論文投稿及び出版にかかわる費用の増加も計上される。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Model‐informed precision dosing of teicoplanin for the rapid achievement of the target area under the concentration‐time curve: A simulation study2023

    • 著者名/発表者名
      Oda Kazutaka、Yamada Tomoyuki、Matsumoto Kazuaki、Hanai Yuki、Ueda Takashi、Samura Masaru、Shigemi Akari、Jono Hirofumi、Saito Hideyuki、Kimura Toshimi
    • 雑誌名

      Clinical and Translational Science

      巻: 16 ページ: 704~713

    • DOI

      10.1111/cts.13484

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Clinical Practice Guideline for the Therapeutic Drug Monitoring of Voriconazole in Non-Asian and Asian Adult Patients: Consensus Review by the Japanese Society of Chemotherapy and the Japanese Society of Therapeutic Drug Monitoring2022

    • 著者名/発表者名
      Takesue Yoshio、Hanai Yuki、Oda Kazutaka、Hamada Yukihiro、Ueda Takashi、Mayumi Toshihiko、Matsumoto Kazuaki、Fujii Satoshi、Takahashi Yoshiko、Miyazaki Yoshitsugu、Kimura Toshimi
    • 雑誌名

      Clinical Therapeutics

      巻: 44 ページ: 1604~1623

    • DOI

      10.1016/j.clinthera.2022.10.005

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Development of Novel Dosing Strategy According to the Area under the Concentration-Time Curve for Vancomycin2022

    • 著者名/発表者名
      Oda Kazutaka
    • 雑誌名

      YAKUGAKU ZASSHI

      巻: 142 ページ: 1185~1190

    • DOI

      10.1248/yakushi.22-00131

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Current Aspects of Pediatric Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of Antimicrobials in Japan: Importance of the Promotion of Population PK/PD Analysis2022

    • 著者名/発表者名
      Shoji Kensuke、Saito Jumpei、Nakamura Hidefumi、Matsumoto Kazuaki、Oda Kazutaka、Takesue Yoshio、Miyairi Isao
    • 雑誌名

      Pediatric Infectious Disease Journal

      巻: 41 ページ: e418~e423

    • DOI

      10.1097/INF.0000000000003622

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 血清トラフ濃度25μg/mLを目標としたテイコプラニン維持投与量に関する後方視的検討2022

    • 著者名/発表者名
      7.近藤 昭志, 尾田 一貴, 片野田 朋美, 成田 勇樹, 岩村 耕次, 野坂 生郷, 城野 博史, 齋藤 秀之
    • 雑誌名

      TDM研究

      巻: 9 ページ: 9~16

    • 査読あり
  • [学会発表] T(ちゃんと)D(decisionできて)M(ますか?)with Pharmacist;重症患者におけるβラクタム系抗菌薬のTDM2023

    • 著者名/発表者名
      尾田 一貴
    • 学会等名
      第50回日本集中治療医学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 薬学研究から臨床化学へのトランスレーショナルリサーチ 分子探索・分析法開発・有用性の検証まで.抗菌薬血中濃度に関する医療薬学研究から分析法開発および普及に向けて2022

    • 著者名/発表者名
      尾田 一貴
    • 学会等名
      第62回 日本臨床化学会年次学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 新時代を切り開く救急集中治療領域の薬剤師のこれから~救急専門薬剤師に期待する役割~.救急集中治療領域における医療薬学研究の進め方2022

    • 著者名/発表者名
      尾田 一貴
    • 学会等名
      第32回 日本医療薬学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 次世代の薬剤師を支えるTDMエビデンスの創出Model-informed precision dosingによるTDMアプローチ2022

    • 著者名/発表者名
      尾田 一貴
    • 学会等名
      日本医療薬学会年会
    • 招待講演
  • [図書] BMs-Podによる薬物投与設計2022

    • 著者名/発表者名
      尾田 一貴
    • 総ページ数
      208
    • 出版者
      南山堂
    • ISBN
      4525723912

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公開日: 2023-12-25  

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