研究課題/領域番号 |
20K17468
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
西岡 敬介 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50790713)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インフルエンザ / ARDS / 細菌叢 |
研究実績の概要 |
インフルエンザの重症化は肺障害、脳症といった重篤な臓器障害を引き起こし、死亡率も高いことから問題になっている。特に高い頻度で続発する急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は病態形成に不明な点が多く、その治療成績は未だ十分ではない。インフルエンザからARDSを発症するケースは多く、その重症化因子の解明はインフルエンザの重症化、続発するARDSの予防に重要である。これまでにARDS患者では特徴的な細菌叢がみらえていることから、本研究では下気道に存在する細菌に着目しインフルエンザの重症化因子の探索を行ってきた。 これまでに重症ARDS患者では具体的にはブドウ球菌属、レンサ球菌属、腸内細菌科とナイセリア属を含むベータプロテオバクテリア網の細菌バランスの偏りが全身性の炎症状態の悪化に寄与している可能性が見られている。昨年度にはレンサ球菌属に着目し、インフルエンザウイルス感染の影響の検討を行ったところ、インフルエンザウイルス複製の亢進に働くことがわかった。今年度はナイセリア属に着目して行ったところ、インフルエンザウイルス複製の抑制を示すレンサ球菌属が複数種同定された。これは、細菌叢内のバランスの破綻が重症化に寄与することを支持する結果となった。また、その活性区画は30-10 kDaに含まれるタンパクである可能性が高く、タンパクの同定はインフルエンザの重症化予防や、その他ウイルス感染症においても重症化予防法に働く可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年に引き続いて、インフルエンザウイルス感染に影響する細菌種の候補を複数得ることができた。複製の亢進と抑制を示す細菌種が、重症患者ではバランスの破綻が見られている細菌属から見つかり、ARDS重症化メカニズムの解明につながる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
インフルエンザウイルス感染について、逆の働きをもつ細菌種が得られている。今後はこれら細菌種がお互いの細菌種にどのような影響を及ぼすか解析を行う。具体的には共培養時にお互いに増殖抑制が起こるかどうか、またその上清がインフルエンザウイルス感染に及ぼす影響を解析する。最終的に、これら細菌の存在下でインフルエンザウイルス感染を行うことで重症化への寄与を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの結果を受けて、当初から予定していた解析を導入しようとしたところ、新型コロナウイルス感染症の流行や、その他世界情勢から、今年度の物品の納入が困難であることがわかった。次年度以降に国内に入荷される予定となっており、次年度使用額の必要性が生じた。
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