研究課題/領域番号 |
20K17469
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
今北 菜津子 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 助教 (50865566)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / SETDB2 / ヒストン修飾酵素 / 炎症性サイトカイン / 肺炎 / 脳症 |
研究実績の概要 |
インフルエンザウイルスは毎年多数の感染者を出し、特に脳症や二次性肺炎は重症化する。申請者は、インフルエンザ二次性肺炎による重症化マウスモデルの解析において、ヒストンH3K9をメチル化する酵素であるSET domain bifurcated 2(SETDB2)の有意な発現上昇を認め、インフルエンザウイルス感染症重症化におけるSETDB2の関与が示唆された。従って、本研究ではインフルエンザウイルス感染症の重症化に関わる分子メカニズムを明らかにし、重症化予測マーカーならびに新規予防法・治療法 の開発に発展させる。 まず、インフルエンザウイルス感染におけるSETDB2発現上昇の意義を探索する目的でSETDB2 LysM-Creマウスの骨髄由来マクロファージ(SETDB2欠損マクロファージ)にインフルエンザウイルスを感染させたところ、野生型マウス由来の細胞と比較して炎症性サイトカインの発現が有意に上昇することを明らかにした。さらに、インフルエンザウイルス感染後のSETDB2欠損マクロファージにグラム陽性菌の細胞壁成分であるPam3CSK4で刺激したところ、著しい炎症性サイトカインの上昇が起こることを明らかにした。以上の結果からも、SETDB2はインフルエンザウイルス感染症の重症化の抑制に寄与していると示唆された。 現在、SETDB2が直接的に制御する標的遺伝子を同定するために、SETDB2ならびにH3K9メチル化がどの因子のプロモーター領域に結合し、遺伝子発現を調節しているのかをChIP-seq法により検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、インフルエンザウイルス感染症の患者が少ないことから、インフルエンザウイルス罹患患者の血清収集において2020年度の新規検体は1件のみの確保に留まっているものの、SETDB2の機能解析により、マクロファージにおいてSETDB2が炎症性サイトカインの発現制御していることを明らかにできたため。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中の、インフルエンザウイルス感染症の重症化におけるSETDB2によるH3K9のメチル化が、どの因子のプロモーター領域で生じているかを見るためのChIP-seqを進める。SETDB2欠損マウスを用いたin vivoインフルエンザウイルス感染症重症化モデルにおいて、SETDB2の重症化への寄与を検討する。 また、これまで収集してきたインフルエンザウイルス感染症の患者血清を用いて重症化の有無とSETDB2、炎症性サイトカインの関係を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、プラスチック類消耗品や試薬などの納入が遅延したため。本年度購入予定である。
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