ヒトRSウイルスは、乳幼児において高率に肺炎などに移行して重症化するが、重症化メカニズムはまだ分かっていない。近年、重症化の一因としてインフラマソームの過剰応答が注目されており、本研究ではインフラマソーム制御に関わるRSウイルスタンパク質について、その制御メカニズムを明らかにすることを目的とする。 当該年度では前年度に引き続き、インフラマソームを活性化させたRSウイルスタンパク質について、活性化メカニズムの解析を行った。まず、NLRP3スペック形成能やカスパーゼの酵素活性などのインフラマソーム構成因子への影響を調べた。これらについて標的タンパク質の有無による差を検討した結果、いずれも差を見出すことができなかった。次に、標的タンパク質について変異体を作製し、インフラマソーム活性への影響を調べた。その結果、特定のドメインを持つ変異体のみがインフラマソームを活性化することが分かった。ドメインの特徴から、インフラマソームシグナルの終盤に影響を及ぼすことが推測されたため、現在はその推測に基づき更なる解析を行っている。 申請当初の計画では、当研究室において近縁ウイルスで見出したインフラマソーム“抑制”能について検討する予定だったが、検討を進めるに従い、RSウイルスは近縁ウイルスとは異なりインフラマソームを活性化させることが分かり、計画を変更した。その後、インフラマソームの過剰な活性化が重症化に関わるという報告も出てきたことから、このインフラマソーム活性化メカニズムの詳細を明らかにすることで、治療薬などへの開発に貢献できると考える。
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