結合型肺炎球菌ワクチン(PCV)の接種導入によって、侵襲性肺炎球菌感染症に罹患する小児は激減した一方で、ワクチンを接種したにもかかわらず、免疫応答が不十分で侵襲性感染症を発症する症例が存在する。免疫応答が不十分な症例の代表として、免疫不全状態の児が挙げられ、抗がん化学療法後でも原疾患や治療による免疫不全状態が知られており、同様にワクチン接種に対する免疫応答が低下する例が見られる。本研究は抗がん化学療法後の児において、ワクチン接種前後で肺炎球菌特異的IgG・IgM抗体価を測定し有意な上昇が得られるかを観察するとともに、リンパ球サブセットの詳細な解析(特にメモリーT、B細胞の解析) を行い、低応答例における宿主側の要因の特定を行う。また、16S ribosomal RNA遺伝子を利用した上気 道細菌叢の網羅的解析を行うことで、細菌側要因の特定を行うことを目的にしている。 令和5年度も引き続き、対象症例数を増やし、対象となる症例から採取した血液検体を用いて、リンパ球サブセット解析および肺炎球菌特異的抗体価の測定を行った。肺炎球菌抗体価が低値であった症例の一部で、13価PCV(PCV13)の再接種を行い接種後の抗体価の測定を行った。抗がん化学療法後の症例は、リンパ球が減少しており、リンパ球サブセット解析においてメモリーB細胞数の減少を認めた。また、肺炎球菌特異的抗体価がIgGおよびIgMともに有意に低値であり、治療によって肺炎球菌特異的抗体価が低下しており再接種が必要と考えられた。
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