当該年度の研究実績として、昨年度までの研究結果で観察された、Candida glabrataの腸管からの播種に相互作用を有すると考えられる細菌のうち、臨床的にもカンジダ属との共感染(血流感染症) がしばしば認められる腸球菌に焦点を当て、Candida glabrataとの相互作用を引き続き評価した。 各種腸球菌を用いたin vitroでのバイオフィルム形成能評価では、C. glabrataとの相互作用として有意なものが認められなかったことから、今年度はin vivoモデルでの評価に焦点を当てて実験を行った。具体的には、マウスにバンコマイシンを含めた広域抗菌薬を投与して腸管内の細菌を除菌した系を用い、C. glabrta単独感染およびC. glabrataとバンコマイシン耐性腸球菌を共感染させる群を設定し、免疫抑制下での臓器への播種および腸管内真菌量を評価した。本実験の結果からは、C. glabrta単独感染およびC. glabrata・バンコマイシン耐性腸球菌共感染群の間に有意な播種の差は認められなかった。 また、腸球菌とC. glabrataの直接的な相互作用を観察するため、無菌マウスを用い、C. glabrta単独感染群およびC. glabrata・E. faecalis共感染群の間を比較する形で、免疫抑制条件下でのC. glabrata腸管内定着・腸管からの播種を評価した。結果として、無菌マウスを用いた実験系でも両群間には明らかな差は認められなかった。 C. glabrataと腸内細菌叢の関連性を考えるにあたり、一菌種に絞った解析ではなく、複数の細菌が複合的に関与している可能性を考慮した実験系を構築する必要があると考えられた。
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