研究課題/領域番号 |
20K17477
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
阿部 雅広 国立感染症研究所, 真菌部, 室長 (10865174)
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研究期間 (年度) |
2022-12-19 – 2025-03-31
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キーワード | Candida glabrata / 腸内細菌叢 / 腸球菌 / Faecalibaculum rodentium / Fecal transplantation / 嫌気性菌 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究では、昨年度までの研究で確認されたCandida glabrataの腸管内定着・腸管からの播種に大きく影響すると考えられる細菌のうち、腸球菌および嫌気性菌 (Faecalibaculum属) に焦点を当てCandida glabrataとの相互作用を評価した。 相互作用の評価は、in vivoモデルを用いて実施した。具体的には、マウスに広域抗菌薬を投与して腸管内の細菌を除菌した後に、C. glabrata単独感染およびC. glabrataと腸球菌 (Enterococcus faecalis)・嫌気性菌 (Faecalibaculum rodentium) を共感染させる群を設定し、免疫抑制下での臓器への播種および腸管内真菌量を評価した。結果として、C. glabrataとF. rodentiumを共感染させた群において臓器への播種が多い傾向が認められ、腸管内での相互作用の可能性が示唆された。 また、別の実験系として腸内細菌叢の変化をfecal transplantationにより引き起こして腸管内定着・腸管からの播種を評価した。具体的には、C. glabrata播種が増加する抗菌薬の組み合わせを投与したマウス (C. glabrata播種群) および正常腸内細菌叢マウス (抗菌薬非投与群) の便を回収し、広域抗菌薬投与マウスに投与した後、免疫抑制下での臓器への播種を評価した。結果として、抗菌薬非投与群の便を用いてfecal transplantationを実施した個体においては臓器への播種が抑制される傾向が認められ、腸内細菌叢の変化が臓器播種に影響することが確認された。 今後は上記結果の再現性を確認すると同時に、相互作用の詳細な機序についてさらなる解析を予定している。また、C. glabrata以外のカンジダ属と上記細菌の関連性についても評価を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年の研究留学に伴い研究期間を延長したが、当初の目標であるカンジダ属の腸管内定着・播種に関連が深いと考えられる細菌の特定に至っているため、研究については予定通り進展しているものと考えられる。 申請時に記載した目標であるカンジダ属播種と腸内細菌叢の関連性の解析については、上記細菌との相互作用について詳細な解析を進めることが残された課題であり、全体として研究は順調に進展しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題としては、in vivo実験系で昨年度までに得られた結果の再現性を確認し、C. glabrataの腸管内定着および臓器への播種に関連する細菌を特定することが挙げられる。 加えて、細菌を特定した後はin vivoおよびin vitro実験系の両面から相互作用の詳細な機序について解析を行い、カンジダ属腸管内定着・臓器播種に与える影響について評価を行う予定である。加えて、C. glabrata以外のカンジダ属の腸管内定着・臓器播種への影響についても併せて評価を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが令和6年4月1日以降となったため。 当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、令和5年度分についてはほぼ使用済みである。
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