研究課題/領域番号 |
20K17481
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
亀田 啓 北海道大学, 大学病院, 助教 (20826127)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | クッシング病 / 下垂体腫瘍 / 副腎皮質刺激ホルモン / ニューロメジンB |
研究実績の概要 |
2020年度は計画通りAtT-20細胞を用いた細胞実験に加え、2021年度に予定していたモデルマウスを用いた実験の予備検討ならびにヒト下垂体腺腫細胞を用いた初代培養の実験も行うことができた。 マウス下垂体癌細胞株であるAtT-20細胞をニューロメジンB(NMB)受容体拮抗薬であるPD168368が各濃度で混合された培養液中で24時間培養したのちRNA、蛋白質を抽出して解析した。リアルタイムPCR法ではc-Fos、Nur77などの転写因子の発現低下を認めた。また、ウェスタンブロッティング法ではCREBやERKのリン酸化を抑制することが示された。いずれもCRH受容体からのシグナルの下流に存在する蛋白であり、NMB受容体拮抗薬はCRH受容体シグナルを抑制することでPOMC産生を抑制することが判明した。MTTアッセイを用いた細胞増殖抑制効果の検討ではPD168368の投与24時間後の細胞生存率はコントロールと比較して60%まで低下した。 クッシング病モデルマウス(下垂体POMC産生細胞特異的ヒトEGFR過剰発現マウス)は10カ月までの飼育でACTH・コルチコステロンの血中濃度の上昇を認めておらず、さらに長期に飼育しACTH・コルチコステロンの上昇を認めたのちにPD168368の投与実験を行う。 ヒトACTH産生下垂体腺腫の検討では現在までに5例のACTH産生腺腫の検体を得ており、PD168368の投与実験を行っており、今後も症例数を増えることを期待している。過去の病理検体を用いたNMB・NMB受容体発現の評価ならびに臨床情報についても過去のクッシング病の症例情報の収集を進めており、NMB・NMBR発現と臨床データとの関連について検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞実験についてはNMB受容体拮抗薬投与による細胞内のシグナル変化を確認できており順調に進んでいる。モデルマウスを用いた実験についてはACTH・コルチコステロンの血中濃度上昇が見られないが、元々2021年度に行う実験の予定でありさらに飼育を継続して再検討する。ヒト下垂体腺腫の検体についても予想を上回る数の検体が得られており、順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
細胞実験についてはさらにDNAマイクロアレイ解析を追加して同定された以外のシグナル変化についても検討を進める。マウス実験についてはモデルマウスのホルモン血中濃度の上昇が得られていないため、今後もホルモン濃度の上昇を認めない場合は今日胸腺無形成マウスをに対するAtT-20細胞接種モデルを用いるなど別な方法を考えている。ヒト下垂体腺腫検体については今後も手術症例があった場合は検体を入手し検討を進める予定である。
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