研究課題
令和4年度は昨年度までの研究に引き続きヒト副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生下垂体腺腫の検討の症例を追加し計7例での検討を行った。ニューロメジンB受容体拮抗薬PD168368の投与により7例中4例でPOMC遺伝子発現の低下、3例でサイクリンEの低下、上清中ACTH濃度の低下を認めた。これまで得られた結果について、論文を作成し現在投稿中である。これまでの検討から本研究では、ヒトACTH産生下垂体腺腫において非機能性下垂体腺腫と比較してニューロメジンBならびにニューロメジンB受容体の発現が増加していることをまず明らかとし、ACTH産生下垂体腺腫でニューロメジンBが自己分泌、傍分泌を介して作用している可能性が示唆された。作用機序としてはAtT-20細胞を用いた検討ではPD168368の投与によりACTH産生ならびに腫瘍増殖がいずれも抑制された。DNAマイクロアレイのパスウェイ解析では細胞周期、脂肪合成系、mRNAプロセシング、p53シグナリング、コレステロール代謝などにかかわる遺伝子系の変化が大きかった。特に細胞周期について、クッシング病腫瘍細胞で発現が報告されているサイクリンEの遺伝子発現を検討したところPD168368の投与により抑制を認め、ニューロメジンB受容体拮抗薬の腫瘍抑制機序に関連すると考えられた。AtT-20を胸腺無形成マウスの皮下に投与するin vivoのクッシングモデルへのPD168368の投与により生体への投与についても効果を発揮する可能性が示された。ヒト検体を用いた薬剤投与実験では半数の症例でPD168368の投与によりACTH分泌低下を認めたが、残りの半数では効果を認めなかったことから臨床で用いる場合は効果のある症例を選択する必要があると考えられた。以上から本検討によりニューロメジンB受容体拮抗薬がクッシング病の新規治療薬となる可能性が示唆された。
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Journal of the Endocrine Society
巻: 7 ページ: 1-6
10.1210/jendso/bvad023
Pituitary
巻: 25 ページ: 321-327
10.1007/s11102-021-01200-0