これまでに申請者は、グルカゴンがDPP-4及びNeprilycin(NEP)によって不活化され、DPP-4欠損ラットで外因性に投与したグルカゴンに対して、DPP-4及びNEPがin vivoにおいてもグルカゴンの分解に関与していることが示唆される結果を得ている。 続いて、内因性のグルカゴン分泌に対してNEPが及ぼす影響を確認するため、C57BL/6マウスにアルギニンを投与後、採血した血液にNEPを添加し、グルカゴン受容体を介したバイオアッセイ法及びELISA法でそれぞれグルカゴンを測定した。NEP添加によってバイオアッセイ法では約50~80%のグルカゴン活性が残存していたが、ELISA法ではNEPを添加するとグルカゴン値は、生理食塩水投与群とほぼ同等の値を示した。ストレプトゾトシンを投与した糖尿病モデルマウスにおいても同様の結果が得られた。これらの結果より、in vivoにおいてグルカゴン活性を有しているがNEPによって分解されない生理活性物質が存在していることが明らかになった。事前にin vitroで行った検討から、オキシントモジュリンはNEP添加後もグルカゴン活性を80~90%程度保持していることを確認しており、オキシントモジュリンがグルカゴン活性を有する生理活性物質として生体内に存在している可能性が示唆された。 オキシントモジュリンはグルカゴンとN末端から29個のアミノ酸配列が同じで、C末端側8個のアミノ酸が延長したホルモンであり、グルカゴン受容体を用いたバイオアッセイ法で、オキシントモジュリンとグルカゴンはほぼ同等の活性を示している。しかしELISA法ではオキシントモジュリンは高濃度条件下でも10%程度の交差性しか示さず、既存のグルカゴン測定法では十分にグルカゴンの生理活性を評価できていないと考えられる。今後オキシントモジュリンの生理作用について検討を進める予定である。
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