研究課題/領域番号 |
20K17496
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
カク テイテイ 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (50834884)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レプチン / グルココルチコイド / 視床下部 / 肥満症 / メタボリックシンドローム / 神経炎症 |
研究実績の概要 |
脂肪組織や肝臓など末梢組織におけるグルココルチコイドの細胞内活性化・不活性化がメタボリックシンドロームの病態に及ぼす影響についてはこれまで多くの報告があるが、視床下部食欲中枢局所での意義はこれまで未解明であった。われわれは視床下部における最も重要な食欲調節因子の1つである、レプチンの応答性に着目して研究を行ってきた。レプチンは脂肪組織から栄養状態に応じた量が分泌され、主に視床下部弓状核に発言するレプチン受容体を介して食欲を抑制し体重を減少させるホルモンである。本研究では、レプチン応答性SHSy5y細胞株を用いて、グルココルチコイドそのものや、グルココルチコイドの細胞内での活性化・不活性化を担う11βHSD1、11βHSD2の遺伝子の過剰発現やノックダウン、薬理学的活性制御が、レプチンシグナルに及ぼす影響を解析することにより、食欲調節におけるグルココルチコイドの細胞内活性化制御の意義を解析した。その結果、11βHSD1の過剰発現によるグルココルチコイドの活性化はレプチン受容体シグナルに影響を与えなかった。一方、11βHSD2の遺伝子ノックダウンや非選択的11βHSD阻害薬CBXにによるグルココルチコイドの不活性化の抑制により、レプチン受容体シグナルは明らかに増強された。逆に11βHSD2の過剰発現はシグナルを減弱させた。以上より、11βHSD2を介したグルココルチコイドの不活性化がレプチン感受性を制御することでエネルギー代謝に影響を及ぼしている可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた解析が概ね実施できているが、一方で、COVID-19のパンデミックの中で海外から購入していた試薬類の納期にいまだに遅延が発生している中、研究の推進に一部困難を伴った。
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今後の研究の推進方策 |
マイクログリア細胞株や共培養系を用いた検討により視床下部局所のグルココルチコイド作用やその活性制御が、視床下部炎症の病態形成に如何なる影響を及ぼすのかについて明らかにすること、動物個体レベルにおける11βHSD1、11βHSD2の中枢神経系における意義について、遺伝子操作や薬理学的介入試験を行うことにより明らかにすること、の2点が残された大きな課題であり、これらに取り組むことにより、細胞内グルココルチコイド活性化制御が肥満症の中枢神経病態に有する意義の全貌の解明に繋げてゆきたい。その結果、全く新しい機序に基づく抗肥満薬の治療標的の提唱を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部納期が遅れて年度内に購入できなかった試薬や消耗品があり(COVID-19流行のため)、実施できなかった実験があったことから、一部、繰り越し残高が発生しました。すでにこれら試薬等の納品の見込みは立っており、今年度中には未完の研究についてすべて遂行できる見通しとなっている。
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